きれいめカジュアルという、最も女性ウケする着こなしの話
きれいめカジュアルに心が動いた瞬間の話
先月の土曜日、代官山のブックストアに立ち寄った時のこと。
棚の前に立っていた男性が、本を手に取ってぱらぱらとページをめくっていた。ネイビーのテーパードチノパン、ホワイトのオックスフォードシャツの袖をまくっていて、足元はダークブラウンのローファー。腕時計だけアクセサリーとしてあった。
ただ本を選んでいるだけ。それだけの所作なのに、なぜかそちらに目が向き続けた。
きれいめすぎて近寄りがたいわけでもなくて、カジュアルすぎてだらしないわけでもない。その間のどこかにいる感じ。本の選び方から醸し出される知的さと、袖まくりのさりげない色気と、ローファーの品格が全部合わさっていた。
あれがきれいめカジュアルの正体だと思っている。
女性がきれいめカジュアルに弱い理由を、正直に話す
スーツの男性には「ちゃんとしている」という印象が生まれる。カジュアルな男性には「親しみやすい」という印象がある。きれいめカジュアルはその両方を同時に持っている。
ちゃんとしているのに近づきやすい、品格があるのに力が抜けている。その両立が、女性目線で最も好印象を与える着こなしになっている理由。どちらかひとつだけでは出せない空気感が、きれいめカジュアルにしかない引力を生んでいる。
男性がきれいめカジュアルを習得すると、どんな場面でも対応できるコーデの幅が生まれる。デート、仕事の後の食事、友人との集まり、街歩き。どこに行っても浮かなくて、どこに行っても好印象を作れる。それがきれいめカジュアルの最大の価値。
きれいめカジュアルを成立させる三つの法則
法則その一、きれいめとカジュアルを意図的にぶつける
きれいめカジュアルは、きれいめなアイテムとカジュアルなアイテムを意図的に組み合わせることで生まれる。
ポイントは意図的という部分で、なんとなく組み合わせた結果がきれいめカジュアルになることはない。きれいめなシャツにカジュアルなデニムを合わせる、カジュアルなTシャツにきれいめなスラックスを合わせる。どちらかをきれいめに、どちらかをカジュアルにする。その計算がコーデに緊張感を生んで、きれいめカジュアルとして機能し始める。
両方きれいめにするときれいめコーデになり、両方カジュアルにするとカジュアルコーデになる。どちらかに振り切れた瞬間に、きれいめカジュアルというバランスが崩れる。
法則その二、一点だけカジュアルに落とすか、一点だけきれいめに上げるか
きれいめカジュアルを作る最もシンプルな方法は、コーデの一点だけを変えること。
きれいめのベースコーデに一点カジュアルを入れる方法。ジャケットにシャツとスラックスというきれいめコーデに、足元だけホワイトスニーカーを合わせる。スーツのジャケットの代わりにデニムジャケットにする。タイをしない。どれも一点の変更がきれいめをカジュアルダウンしてきれいめカジュアルに着地させる。
カジュアルのベースコーデに一点きれいめを入れる方法。Tシャツとデニムというカジュアルコーデにローファーを合わせる。デニムをテーパードチノパンに変える。腕時計をつける。これも一点の変更がカジュアルをきれいめカジュアルに引き上げる。
法則その三、シルエットの清潔さがきれいめカジュアルの土台
どんな組み合わせでも、シルエットが崩れているとカジュアルにしかならない。
だぼっとしたTシャツにダボっとしたデニム、足元も大きなスニーカー。全部がカジュアルの文脈にある状態では、何か一点きれいめなものを加えても印象は変わらない。きれいめカジュアルの前提として、シルエットが整っていることが必要で、そこから意図的な組み合わせが機能し始める。
体のラインに自然に沿うサイズ感、丈感が正確なパンツ、清潔な状態のアイテム。この基本が整った上でのきれいめカジュアルの組み合わせが、女性目線で印象に残るコーデを作る。
きれいめカジュアルの鉄板コーデ、全部具体的に出す
シャツ×デニム×ローファーが最強のきれいめカジュアル
きれいめカジュアルの代表格として、シャツとデニムとローファーの組み合わせを超えるものはなかなかない。
ホワイトかライトブルーのオックスフォードシャツ、インディゴブルーのストレートかテーパードデニム、ダークブラウンかネイビーのローファー。この三点が揃った時、きれいめカジュアルとして理想的なバランスが生まれる。
シャツのきれいめな素材感とローファーの品格が、デニムのカジュアルさを引き上げる。デニムのカジュアルさがシャツとローファーの堅さをほぐす。三点それぞれが互いに作用し合って、どれかひとつだけでは出せない温度感が完成する。
袖をまくることを忘れないこと。シャツの袖まくりがこのコーデに動きと色気を加えて、きれいめカジュアルの仕上げになる。ローファーを素足で履くと夏らしい抜け感が加わって、季節感まで表現できる。
Tシャツ×テーパードパンツ×ローファーのシンプルな正解
白TシャツかグレーのシンプルなクルーネックTシャツに、ネイビーかベージュのテーパードパンツ、ローファー。
Tシャツというカジュアルのアイテムに、テーパードパンツのきれいめな素材感とローファーの品格が加わることで、シンプルなのにきれいめカジュアルとして成立する。Tシャツ×チノパン×スニーカーよりも、ローファーという一点の変更だけで格が上がる。
このコーデの完成度を上げたいなら、腕時計をひとつ加えること。Tシャツのカジュアルさに時計の品格が加わって、首元から腕にかけての視線の流れが生まれる。それだけで、ただTシャツを着ているのではなく、コーデとして考えられていることが伝わってくる。
ニット×デニム×チェルシーブーツの秋冬きれいめカジュアル
グレーかネイビーのハイゲージニットに、インディゴデニム、ブラックかダークブラウンのチェルシーブーツ。
ニットのきれいめな素材感とチェルシーブーツの都会的なシルエットが、デニムのカジュアルさをちょうどよく引き上げる。秋冬のきれいめカジュアルとして、この組み合わせの完成度は高くて、デートから友人との食事まで幅広く対応できる。
チェルシーブーツのシャープなシルエットがデニムの裾からのぞく状態が特に美しくて、ロールアップして足首とブーツの組み合わせを見せると、コーデへの意識が伝わってくる足元になる。
ジャケット×Tシャツ×デニムの上級きれいめカジュアル
テーラードジャケットをTシャツの上に羽織って、デニムと合わせる組み合わせ。これが決まっている時の完成度は、きれいめカジュアルの中で最も高い部類に入る。
ジャケットという最もきれいめなアイテムと、Tシャツとデニムという最もカジュアルな組み合わせが合わさる。その振れ幅の大きさが計算されていることが伝わった時に、このコーデは完成する。
ネイビーのジャケットにホワイトのTシャツ、インディゴデニム、ホワイトのレザースニーカー。ジャケットの中のTシャツがきれいめとカジュアルの橋渡しをして、スニーカーがカジュアルの文脈を担保する。この組み合わせが公園のカフェで完成していた男性に、思わず声をかけたくなった経験がある。
カーディガン×シャツ×チノパンのこなれたきれいめカジュアル
薄手のカーディガンをシャツの上に羽織って、チノパンと合わせる。カーディガンの記事でも触れた組み合わせだけど、きれいめカジュアルの文脈では改めて話したい。
カーディガンはジャケットより肩の力が抜けていて、シャツよりカジュアルで、二つのアイテムがそれぞれの中間を作っている。その中間にいるアイテム同士を合わせることで、コーデ全体が自然なきれいめカジュアルに着地する。
ネイビーのカーディガンにホワイトのシャツをインナーにして、ベージュのテーパードチノパン。足元はローファーかレザーシューズ。カーディガンの前を開けてシャツが少し見える状態にすると、コーデに奥行きが生まれてきれいめカジュアルとして完成度が上がる。
きれいめカジュアルのアイテム選び、素材と色の話
素材の組み合わせがきれいめカジュアルを成立させる
きれいめカジュアルにおいて素材の組み合わせは、シルエットと同じくらい重要。
きれいめな素材とカジュアルな素材を意図的に混ぜることで、コーデに緊張感と抜け感が同時に生まれる。ウールのスラックスとコットンのTシャツ、リネンのシャツとコットンデニム、レザーのローファーとコットンチノ。素材の格が違うものを組み合わせる時の対比がきれいめカジュアルの質感を作る。
同じ素材感のアイテムばかり揃えると、コーデが単調になりやすい。きれいめとカジュアルの素材を意識的に混ぜることで、コーデに動きと奥行きが生まれる。
色はベーシックカラーを軸に、一点だけ変化をつける
きれいめカジュアルの色選びは、ベーシックカラーを軸にすることが基本。
ホワイト、ネイビー、グレー、ベージュ、ブラック。この五色の組み合わせからきれいめカジュアルを作ることができれば、どんな場面でも外れない。これらのベーシックカラーはきれいめとカジュアルの両方の文脈に属していて、どちら側にも引っ張られすぎない中立の立場にある。
差し色を入れたいなら一点だけ。ネイビー、グレー、ホワイトのベーシックコーデに、バーガンディかオリーブのニットを加える。スニーカーの色だけを変える。アクセサリーの素材でゴールドを入れる。その一点が、ベーシックなきれいめカジュアルに個性を加えてくれる。
きれいめカジュアルでやってはいけないこと
きれいめとカジュアルが喧嘩しているコーデ
スーツのジャケットにバギーデニムとスポーツサンダル。フォーマルスーツのジャケットに、カジュアルすぎるデニムとサンダルが合わさると、文脈の距離が開きすぎてどちらも死んでしまう。
きれいめカジュアルはきれいめとカジュアルの距離を適切に保つことが条件で、距離が開きすぎると組み合わせが崩壊する。スーツジャケットと合わせるなら、デニムはストレートかテーパードのシンプルなものにして、シューズはレザースニーカーかローファーにすること。その距離感がきれいめカジュアルとして成立する範囲を保つ。
カジュアルアイテムを足しすぎてカジュアルに落ちる
きれいめコーデにカジュアルを入れようとして、入れすぎてしまうパターン。
シャツとスラックスというきれいめコーデに、スニーカーを入れる。ここまではきれいめカジュアルとして成立する。そこにさらにキャップを加えて、バッグをリュックにして、腕にゴムバンドをつける。一点ずつ加えるうちに、どんどんカジュアルに落ちていってきれいめカジュアルのバランスが崩れる。
カジュアルを入れるのは一点か二点まで。それ以上は余分で、コーデのバランスが崩れていく。
清潔感が崩れるとカジュアルにしかならない
どんなにきれいめとカジュアルの組み合わせが計算されていても、清潔感が崩れた瞬間にきれいめカジュアルではなくただのカジュアルになる。
首元がヨレたTシャツ、くたびれたローファー、シワが入ったシャツ。これらがひとつでもあると、きれいめカジュアルのバランスが崩れて、カジュアルの文脈だけが残る。清潔感はきれいめカジュアルを成立させる前提条件で、これがない状態でどんなに組み合わせを工夫しても意味がない。
きれいめカジュアルが決まっている男性への、正直な印象
きれいめカジュアルが女性に伝えるメッセージ
きれいめカジュアルを着こなしている男性から、言語化されないままに伝わってくるものがある。
場の空気を読んでいる人という印象。スーツが必要な場面ではないけど、カジュアルすぎてもいけない、という判断ができている。その判断力がコーデから滲み出てきて、仕事でも同じような判断力を持っている人だろうという信頼感につながる。
きれいめカジュアルは、着ている本人の知性と気遣いを表現するコーデだと思っている。服装を通じて、その人の内側が見えてくるよ。
