スラックスデニムを一本買えば、きれいめにもカジュアルにも使える。そんな触れ込みを信じて手に取った男性は多い。
たしかに嘘ではない。でもその言葉をそのまま受け取って、毎回同じ組み合わせで着ていると、きれいめにもカジュアルにも寄り切れない、どっちつかずな印象になっていることがある。スラックスデニムが本当に便利なのは、両方に対応できる素材だからじゃない。両方に対応できる分、着るたびにどちらへ寄せるかを自分で決める必要がある、というアイテムだからだ。
スラックスデニムの「両方使える」は、毎回選び直す必要がある、という意味だった
普通のスラックスには、放っておいてもきれいめに見えるという初期設定がある。普通のジーンズには、放っておいてもカジュアルに見えるという初期設定がある。
でもスラックスデニムには、その初期設定がない。素材はデニムなのに、シルエットはスラックス。どちらの方向にも転がる可能性を持ったまま、宙ぶらりんの状態でクローゼットに掛かっている。着る人が意識的にどちらかへ倒してあげないと、コーデ全体がぼやける。
スラックスに見えるかどうかは、生地の「情報量」で決まる
ステッチの色が、遠目の第一印象を決める
デニムを一目でデニムだと認識させる一番の情報は、実はシルエットより先に、ステッチの色だ。オレンジやイエローのステッチが入っていると、どれだけシルエットがきれいでも、遠目からジーンズだと判断されやすい。
ステッチが生地と同系色、たとえば紺の生地に紺のステッチ、黒の生地に黒のステッチになっていると、その情報がぐっと減って、スラックスに近い見え方になる。スラックスデニムを選ぶときは、まずステッチの色を確認する習慣を持つといい。
バックポケットの装飾は、あるだけでカジュアルに引き戻される
バックポケットにステッチの模様やタブが付いていると、それだけで視覚的にジーンズだと判断されやすくなる。スラックスとして寄せたい日は、ポケットの装飾がシンプルか、無地に近いものを選んだほうが安心できる。
生地の色落ちも同じ理屈で、ひげ状の色落ちやダメージ加工がちらほら見えると、カジュアルな印象が強くなる。色ムラの少ない、つるんとした均一な色合いのものほど、スラックスとして機能しやすい。
女性が見た、スラックスデニムがきれいめに見えていた男性の話
会社の飲み会で隣に座った男性のパンツが、最初はスラックスだと思っていた。
黒に近いダークネイビーで、生地の表面はざらざらというより、なめらかな質感に見えた。ステッチも生地と同じ色で、遠目には全く気づかなかった。話の流れで、実はデニムなんです、と本人から聞いて初めて気づいた。
そのときのトップスがきれいめなニットで、靴が革靴だったことも、スラックスに見えた理由の一つだったと思う。パンツ単体の力だけじゃなくて、コーデ全体できれいめに寄せていたから、デニムだと気づかれなかったんだと思う。
スラックスデニムをきれいめに倒すコーデ
きれいめに寄せるなら、トップスとアウターを完全にきれいめ路線でまとめること。ジャケット、シャツ、きれいめのニット。足元は革靴かローファー。パンツ一本にきれいめを頼らず、コーデ全体で寄せることで、デニムという素材の情報を薄める。
スラックスデニムをカジュアルに倒すコーデ
逆にカジュアルに寄せたい日は、スウェットやTシャツ、スニーカーを合わせる。スラックスシルエットの端正さが、カジュアルなトップスの中で程よいコントラストになって、こなれた印象を作れる。
スラックスデニムでやりがちな失敗
一番多いのが、きれいめのアイテムとカジュアルのアイテムを両方少しずつ混ぜてしまうこと。ジャケットにスニーカー、カジュアルなTシャツに革靴、というように中途半端に混ぜると、パンツの二面性がさらに強調されて、コーデ全体がぼやける。
きれいめかカジュアルか、その日の他のアイテムで方向を決めてから、パンツを合わせる順番にすると失敗が減る。
スラックスデニムが板についている男性の共通点
パンツ自体の万能さに頼らず、その日どちらに寄せるかを自分で決めている男性。
ステッチの色、ポケットの装飾、色落ちの有無。これらを確認した上で、コーデ全体の方向をはっきりさせている。その判断があるだけで、同じ一本のパンツが、きれいめにもカジュアルにも、迷いなく機能するようになる。
