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40代のキャップは黒をやめると顔の影が消えて5歳若返る

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改札を抜けた瞬間、黒いキャップの男性が急に老けた

朝の乗り換え、前を歩いていた男性。
後ろ姿は文句なしでした。背筋が伸びて、スニーカーの汚れもなくて、歩き方に余裕がある。
四十代前半かな、くらいの印象。
ところが券売機の前で振り返った顔を見て、私は足のリズムがずれた。

目の下に、濃い横線が入っていたんです。
くまじゃない。疲れてもいない。
つばの影が、ちょうどそこに落ちていただけ。
たった一枚の布が、その人の年齢を勝手に五つ足していた。

つばの影は、いちばん見られたくない場所に着地する

帽子のつばは、上から降ってくる光を遮る道具でしょ。
遮った先に何が待っているか。
目の下、頬骨の上、小鼻の脇。
四十代になると薄く陰りが出はじめる場所と、つばの影が落ちる位置が、ぴたりと重なります。
偶然にしては意地悪すぎる一致。
そのうえ黒は光を吸うから、跳ね返りがゼロ。影がまるごと居座る。

女は最初に、目のまわりの明るさを読む

私たちは毎朝、鏡の前で目の下に明るい色を置いています。
コンシーラーを一往復させるだけで表情がどれだけ変わるか、指で覚えている。
だから他人の顔を見るときも、無意識に同じ場所からスキャンしてしまうんですよね。
最近疲れてる?と聞かれがちな男性の何割かは、たぶん疲れていません。
そこに光が届いていないだけ。

四十代が選ぶべきは、黒でも紺でもなく明るい色

この話をすると、九割九分が渋い顔をします。
白いキャップなんて若作りだろ、汚れるし、無難がいちばんだって。
それでも譲りません。四十代こそ、明るい色のキャップ。

黒を選ぶ理由って、たいてい消極的じゃないですか。
何にでも合うから、失敗しないから、目立たないから。
でも顔の真上に置く布は、服のなかで唯一、肌の色を直接いじってくる装備なんです。
そこを無難で埋めるのは、もったいない。

レフ板の理屈が、つばの裏側で起きている

撮影で顔の下に白い板を置くの、見たことありますよね。
あれとまったく同じことが、帽子のつばの裏で起きます。
明るい色の裏地は、地面や壁に当たった光をふわっと拾って、顎の下から顔へ返す。
影が薄まって、肌の凹凸がなだらかに見える。
黒い裏地は、その光を全部飲み込む。返してくれない。
同じ顔、同じ天気、同じ時間。それでも別人みたいに写ります。

真っ白ではなく、白の手前で止めるのがコツ

純白は、肌が黄みがかって見える人がいます。
生成り、ライトグレー、灰みのベージュ、砂を薄めたような色。このあたりが安全圏。
汚れが気になる、という反論は毎回もらいます。
中性洗剤と使い古しの歯ブラシで、つばの縁をこすれば落ちますよ。
汚れが怖くて影を選ぶのは、割に合わない取引だと思う。

深く被れば若く見える、と言った私が間違っていた

偉そうに書いていますが、私も派手にやらかしています。
四十三歳の職場の先輩に、キャップを勧めたときのこと。
若い子はみんな目深に被ってますよ、と得意げに助言しました。
先輩は素直に、目のふちが隠れるくらいまで深くかぶってくれた。

目が隠れた瞬間、年齢じゃなく人格が疑われる

その日の飲み会。
先輩の周りだけ、なんとなく人が減っていた。
遠くから見ていて、私の耳がじわっと熱くなりました。
視線の行き先が読めない相手に、人は自然と近づかなくなるんですよ。
若く見えるどころか、話しかけづらい人の完成。
はぁ…翌日、こっそり謝りに行きました。(余計なこと言ってごめんなさい)

眉が半分のぞく高さで、手を止める

浅すぎると、頭に乗せただけの間抜けなバランス。
深すぎると人格ごと消える。
正解は、眉が半分だけ見える位置。
鏡の前で一センチずつ下げていって、目のまわりがいちばん明るく見えたところで手を離す。
前髪を少しだけ出すと、帽子と顔のあいだに緩衝材ができて、かちっと固まった印象がほどけます。

素材を替えるだけで、キャップは大人の持ち物になる

色の次に効くのが、生地。ここを見ている人、意外と少ないんです。

コットンツイル一択から降りる

量販店で売られているキャップの大半は、つるっとしたコットンツイル。
悪くはないけれど、あの生地は学生の記号を背負っています。
ウール、メルトン、コーデュロイ、起毛のスウェード調、夏ならリネン混。
厚みと毛羽が出るだけで、同じ形なのに落ち着いた顔になる。
指で触ったときにざらっと返ってくる生地を選ぶ、くらいの覚え方でいいと思います。

ロゴは、糸の色を生地に寄せる

白地に白の刺繍、グレー地にグレーの刺繍。
文字が読めなくて構いません。むしろ読めない方がいい。
遠くから判別できるロゴは、その人の顔より先に喋りはじめます。
四十代の魅力って、静かなところにあるでしょ。
帽子に自己紹介をさせる必要は、もうないはずなんです。

髪と、襟足と、白髪のこと

帽子は髪型を隠す道具だと思われがちですが、実際は逆。
隠れなかった部分だけが、やたら目立つようになります。

耳の上の毛が跳ねると、全部が台無し

帽子の縁の下から、翼みたいに毛が飛び出している人。
街でよく見かけます。
どれだけ良い生地を選んでも、あれ一発で生活感がにじむ。
かぶる予定の日は、耳まわりだけでも指で押さえて整えるか、思い切って短くしておく。
サイドを刈り上げた頭とキャップの相性は、正直ずるいくらい良いですよ。

白髪こそ、明るいキャップに助けられる

黒いキャップと白髪の組み合わせは、コントラストで白い毛だけが浮き上がります。
ところが灰みのベージュやライトグレーだと、帽子と髪が地続きに見えるんです。
白髪が欠点ではなく、色のグラデーションの一部になる。
染めるより早いし、痛まないし、お金もかからない。
四十代の白髪は、隠す対象から素材に格上げできる。私はそう見ています。

四十五歳、娘に褒められた元同僚の話

最後に、ちゃんと効いた例をひとつ。
前の職場にいた四十五歳の先輩は、休日はいつも真っ黒なキャップでした。
本人いわく、汚れが目立たないから。
その理由、まあ分かる。分かるけど、と思いながらライトグレーのウールキャップを勧めてみたんです。

翌週の月曜、彼が席に着くなり報告してきた。
中学生の娘さんが、今日のそれいいじゃん、と言ったらしい。
たったそれだけの話を、三日間くり返し聞かされました(笑)
声のトーンが半音上がっていたのを、いまでも覚えている。

同じ帽子なのに、飽きられない理由

明るいキャップは、合わせる服の色を選ぶと思われがちです。
実際は逆で、黒よりよほど幅が広い。
紺のシャツにも、カーキのブルゾンにも、濃茶のニットにも乗る。
色の主張が弱いぶん、隣に来た色を立ててくれるから。
彼はその一個を一年半かぶり続けて、社内アルバムのなかで一人だけ、去年より若返っていました。

帽子ひとつで人生が変わるとは言いません。
ただ、顔に落ちる影の濃さは、その日その日の見え方をたしかに左右する。
黒い一個を棚に戻して、明るい一個を手に取る。
その数百グラムの選び直しで、鏡の中の目のまわりが、ふっと明るくなります。

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