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20代後半のメンズファッションは、服より靴の踵で判断される

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二十七歳の彼が、居酒屋の座敷で靴を脱いだ瞬間

四人で座敷に上がる流れになったときのことです。
入り口で靴を脱いで、みんなで下駄箱に押し込んだ。
その一秒に、私は見てしまった。

彼のスニーカーの踵が、内側に倒れていたんです。
外側だけ削れて、ソールが斜めになっている。
かかとの内布は破れて、白いスポンジが顔を出していた。

上は悪くなかったんですよ。
きれいめのシャツで、髪も切ったばかりで、話も面白い人だった。
それなのに、私の頭にその斜めのソールがずっと残ってしまって…。
帰り道、いっしょにいた友人が先に言いました。あの靴、何年目だろうね、って。

二十代前半までは、勢いで許されていた

学生のうちは、消耗した靴に物語がありました。
遊び倒した、動き回った、そういう証拠として読める。
ところが二十代後半になると、同じものが別の意味に変わるんです。
買い替えられない人、もしくは自分の状態に気づいていない人。

この読み替えは、誰も教えてくれません。
ある日いきなり、周りの解釈だけが更新されている。
そこに気づけないまま、去年と同じ格好で三十歳に着地する人が本当に多い。

女は座敷と玄関で、必ず足元を見る

私たちが靴を見るタイミングは、決まっています。
待ち合わせで相手を見つけた直後の、上から下への一往復。
そして、靴を脱ぐ場所。

座敷、試着室、友人の家、旅館。
そこで見えるのは、外側ではなく内側です。
中敷きが黒くなっているか、かかとの縫い目がほつれていないか。
これ、意地悪で見ているわけじゃないんですよ。
勝手に目に入ってしまう。

二十代後半に必要なのは、新しい服ではなく買い替えの周期

ここで、九割九分に反対されることを書きます。
この年代でやるべきは、垢抜けでもトレンドの吸収でもありません。
持っているものを、決めた周期で捨てて入れ替える。それだけ。

おしゃれになりたい人ほど、足し算をします。
新しいアウター、話題のブランド、雑誌に載っていた形。
その裏で、三年前のTシャツと二年前のスニーカーが現役のまま残っている。
新しい一枚は、古い九枚に引きずられます。

白いTシャツは一年、スニーカーは二年で退場

白Tの寿命は一年。
襟のリブが波打ってきたら、その時点で終わりです。
洗濯を重ねた白は、光の下で黄色く沈む。部屋の照明では気づけません。

スニーカーは二年。
歩き方の癖でソールが斜めに減ったら、修理より買い替えのほうが早い。
かかとが傾いた靴は、姿勢まで連れて傾きます。

デニムは三年から五年。ここは育てても構わない。
アウターはもっと長く着ていい。
つまり、肌に近いものほど短命。ここを逆にしている人が多いんですよね。高いアウターは毎年買うのに、白Tは五年目とか。

クローゼットに、去年着なかった服が何枚残っているか

一度、全部出してみてほしいんです。
去年一度も袖を通さなかったものを、床に並べる。
たぶん、想像より多い。

私も昨秋やって、床が見えなくなりました(笑)
そこから半分を手放したら、朝の支度が三分短くなった。
選択肢が減ると、迷いが消えて、結果的に組み合わせの精度が上がります。
服を増やすほど、着る服は減っていく。この矛盾に、二十代後半で気づけるかどうか。

サイズの正解が、この五年で入れ替わっている

体つきの話をします。ここが二十代前半との一番大きな違い。

肩と首まわりが変わったのに、同じサイズを買い続けている

二十代後半になると、多くの男性は少し厚みが出ます。
デスクワークで背中が丸くなる人もいれば、ジムで肩が張る人もいる。
どちらにしても、二十二歳のときのサイズは合っていません。

それなのに、店で同じMを手に取る。
肩の縫い目が肩先より内側に食い込んでいたら、もう小さいサインです。
腕を上げたときに脇が突っ張るのも同じ。
自分の体に服を合わせるのではなく、記憶の中の体に合わせている状態。

丈は、親指の付け根で止まる位置

トップスの丈は、腕を下ろしたときに親指の付け根あたり。
それより長いと、脚の位置が下がって見えます。
短すぎると、動くたびに腰が見えて落ち着かない。

パンツの裾は、靴の甲に一度だけ触れる長さ。
くしゃっと三段になっているのは、二十代前半で卒業していい。
裾上げは千円前後で頼めます。
一本ずつ直していくだけで、同じ服なのに背が高く見えるようになる。私は弟に半年これを言い続けて、やっと直してもらった…。

三色まで。二十代後半の配色は減らすほど効く

色を足すのは、二十代前半までの遊び方です。

全身を三色以内に閉じる

上、下、靴。この三つで三色。
バッグや帽子を足すなら、すでに使った色から選ぶ。
四色目が入った瞬間、視線が散って、体の輪郭がぼやけます。

色を減らすと地味になると思うでしょ。
実際は逆で、色が減るほど顔と体型が前に出てくる。
服が主役から降りて、人が主役になる。
二十代後半で目指すのは、その状態です。

黒を一度、濃紺か濃茶に置き換えてみる

黒は便利だけれど、日光の下で顔に影を作ります。
濃紺やチャコール、濃い茶色に振ると、肌の色が沈まない。
落差が少しゆるむだけで、表情が明るく見えるんです。

全部を替える必要はありません。
顔の近くにくる一枚だけ、黒から離れる。
それで写真の写りが変わったと言われた人を、私は何人も知っています。

後輩が変わった半年と、私が知ったかぶって外した日

靴を二足だけ入れ替えた二十八歳

弟の友人に、服にまったく興味がない人がいました。
何を買えばいいか分からない、と言うので、私が出した提案はひとつだけ。
服はそのままでいいから、靴を二足だけ買い替えて、と。
白い革のスニーカーと、濃茶のレザーシューズ。

半年後、共通の集まりで会ったとき、私は一瞬誰か分からなかった。
服は本当に同じでした。ユニクロのシャツも、無地のニットも。
変わったのは足元と、それに伴った姿勢だけ。
その年に彼は転職して、結婚もしました。
靴のおかげとは言いません。ただ、始まりはあそこだったと本人が言っている。

トレンドの形を勧めて、彼を五キロ太らせて見せた話

私の失敗も置いておきます。
数年前、太いシルエットが流行りはじめたころ。
当時の彼に、ワイドなパンツとオーバーサイズのシャツを勧めました。
これが今っぽいから、と自信満々に。

着てもらって、待ち合わせ場所で目が合った瞬間。
私、うわ、と思ってしまったんです。
布の量に体が負けていた。
似合ってるよ、と言いながら、内心で謝っていた…あれは私の責任。
流行の形は、体格を選びます。
細身の人が大きい服を着ると、消える。骨格が太い人が着ると、増える。
雑誌に載っていたから、は理由になりません。

手入れの十分が、値段の差を埋める

最後は、買った後の話。ここで差がつきます。

ブラシと消しゴム、二つあれば足りる

洋服ブラシを一本。ニットやコートの毛並みを、着た日に一往復させる。
毛玉ができる前に、繊維の絡まりをほどける。
スエードの消しゴムがあれば、靴の汚れも落ちます。

合わせて三千円くらい。
これをやっている人の服は、二年たっても新品に近い顔をしています。
やっていない人の服は、半年でくたびれる。
同じ値段の服なのに、そこで差がつくのは少しさみしい。

アイロンをかけない人は、シワにならない服を選ぶ

面倒なら、素材で回避してください。
綿百パーセントのシャツは、干し方を間違えると容赦なくシワが残ります。
ポリエステル混や、加工されたものを選べば、ハンガーに掛けておくだけで戻る。

自分の生活に合わない服は、どれだけ良くても着なくなります。
続けられる仕組みを作るほうが、根性より早い。

二十代後半は、服を増やすより、通り過ぎたものを手放す時期だと思っています。
古いスニーカーを一足捨てて、新しい一足を箱から出す。
翌朝それを履いて玄関を出るとき、かかとがしっかり地面を捉える感触があるはずです。
その一歩が、たぶん一番早い変化。

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