MENU

ジャケットの種類 メンズ、一着目に選ぶべきはこれ

  • URLをコピーしました!

夕方の百貨店で、男性が三着のジャケットを腕にかけて立ち尽くしていた。
テーラード、ブルゾン、そしてよくわからない中間の何か。店員さんに何度も同じ質問をしていた。
「これ、普段でも着られますか」
その問いに、店員さんはどれも「はい」と答えていた。

目次

種類を覚えても、着られる場面がわからなければ意味がない

テーラードジャケット、ブレザー、MA-1、コーチジャケット、デニムジャケット、ライダース。名前だけ並べると十を超える。
覚える必要、ある? 私はないと思っている。
見るべきは形の名前じゃなくて、その一着が持っている場面の記憶。着た瞬間に、周りが何を連想するか。

服には、それぞれ出身がある

ミリタリー由来のものは軍隊、スポーツ由来のものは競技場、テーラードは仕事場。
その記憶は、どんなに着崩しても完全には消えない。
MA-1を着た男性を見て、女性が思うのは元気そう。テーラードなら、しっかりしてそう。デニムジャケットなら、こだわりがありそう。
これは服の良し悪しじゃなくて、社会に染み込んだ連想の話。逆らうより、利用したほうが早い。

一着目で失敗する人は、たいてい形から入っている

かっこいいと思った形を買う。それ自体は悪くない。
ただ、その一着が似合う場面が年に二回しかなかったら、クローゼットで眠るだけ。
先に決めるのは、どこへ着ていくか。仕事と休日の比率、会う相手、行く店。そこから逆算すると、選ぶべきものは驚くほど絞れる。

一着目に選ぶなら、迷わずこれ

最初の一着は、柔らかいテーラードジャケット。紺かベージュで、肩に芯が入っていないもの。
異論はあると思う。今の流行はもっとゆるいし、テーラードは古いと言われることもある。
それでも、これを勧める理由がある。

顔まわりに直線を作れるのは、この形だけ

テーラードの襟は、V字を作る。首から胸にかけて、縦の線が入る。
この線が、顔を小さく見せて、首を長く見せる。ブルゾンやパーカーには、この効果がない。丸い襟は顔を横に広げるから。
女性が向かい合って座ったとき、いちばん見ているのは顔から胸元。そこに縦線があるかどうかで、印象がかなり動くの。

柔らかいものを選べば、休日にも着られる

テーラードが硬いと言われるのは、スーツの上着と同じ作りのものを想像しているから。
肩に芯が入っていなくて、裏地が半分だけで、生地が綿や麻のもの。これなら、Tシャツの上に羽織っても違和感がない。
畳んで鞄に入れられるくらいの柔らかさ。試着室で肩を押してみて、硬い抵抗がなければ合格。

二着目からは、季節と場面で足していく

一着目が決まれば、あとは埋めていく作業。

春秋の軽い羽織りに、コーチジャケット

薄手で、襟が小さくて、前がスナップで留まるもの。もともとは競技の指導者が着ていた形。
軽いから、鞄に入れて持ち歩ける。急に冷えた夜に出せる。
選ぶなら、光沢の少ない素材。てらてら光るものは、街で浮く。無地で、ロゴが小さいもの。
黒か濃紺が使いやすい。ベージュは汚れが目立つから、二着目以降で。

冬の主役として、ウールのブルゾン

コートまで長くなくていい、でも寒い。その隙間を埋めるのがこれ。
丈が腰で止まるから、脚が長く見える。コートと違って、車の運転でも邪魔にならない。
生地がウール混だと、ミリタリー由来の形でも上品に転ぶ。同じ形でも、ナイロンとウールでは別の服になるの。

デニムジャケットは、実は難易度が高い

定番と思われているけれど、これは扱いが難しい。
丈が短くて、体に張りついて、色が明るい。三つの条件が揃うと、上半身だけが目立って重心が上がる。
着るなら、色は濃紺かブラック。サイズは少し大きめ。下は必ず濃い色にする。
デニムにデニムを合わせるのは、相当うまい人だけがやること。私は勧めない。

年齢で選ぶべきものが変わる、という現実

三十を過ぎたら、ミリタリーは素材で選ぶ

MA-1やM-65のような軍由来の形は、二十代なら勢いで着られる。
三十を過ぎると、元の素材のままだと若作りに見えることがある。ナイロンのつやが、顔の疲れを際立たせるの。
同じ形でも、ウール混やコットン、あるいはマットな質感の素材を選ぶと、年齢に馴染む。
形を諦める必要はない。素材だけ変えればいい。

ライダースは、着る人の体格を選ぶ

革のジャケットは強い。着た瞬間に空気が変わる。
ただ、体に厚みがある人が着ると、上半身が膨らんで見える。革は硬いから、体の線を隠さずに広げる。
細身の人がぴったりしたものを着ると決まる。この形だけは、体型との相性がはっきり出る。
黒より、こげ茶のほうが柔らかい。初めての一着なら、そっちから。

サイズが合っていないジャケットは、種類の話以前で終わる

どの形を選んでも、ここが外れると全部無駄になる。

肩の縫い目が、腕に落ちていないか

今はゆったりした形が主流。だから店に並んでいるものの多くが、肩幅より大きい。
落とすなら、肩の骨から指二本ぶんまで。それを越えると首が短く見えて、背中が丸く見える。
試着室で、肩に手を置いてみて。骨の位置と縫い目が重なっているかどうか。ここだけは妥協しないで。

丈は、お尻が半分見える位置で

長すぎると重心が下がって、脚が短く見える。短すぎると子どもっぽさが出る。
腕をだらんと下ろして、手のひらの真ん中に裾がくるくらい。この位置なら、たいていの体型で成立する。
ブルゾンやコーチジャケットなら、もっと短くていい。腰骨が隠れるくらい。

三着買って、二着を手放した男性の話

知り合いの男性が、去年ジャケットを立て続けに買った。
理由は聞かなくてもわかった。彼は当時、婚活を始めたばかりだった。

最初に買ったのは、黒のライダース

一着目は革だった。黒くて、金具が多くて、店で見たときは確かに決まっていた。
初対面の食事に、それを着ていったらしい。
結果は、あまり良くなかった。相手の女性が、少し身構えていたと彼は言っていた。
革の黒は圧が強いの。特に初対面だと、警戒される方向に働くことがある。
もったいない、あれは二回目以降の服だよ
話を聞きながら、私は心の中でそう呟いていた。

二着目は、大きすぎたブルゾン

次に買ったのは、流行の形の大きいブルゾン。
肩が落ちて、丈が長くて、彼の細い体には布が余っていた。
写真を見せてもらったとき、洋服だけが立っているように見えた。本人の存在が消えていたの。
似合ってないと言うのは酷だと思って、私は言葉を選んだ。もう少し小さいほうが、あなたの体には合うかも、と。
彼は素直に頷いていた。

三着目で、ようやく

最後に買ったのが、ベージュの柔らかいテーラードだった。
肩に芯がなくて、丈がお尻の半分で止まって、下に白いTシャツを着ていた。
その姿を見たとき、私は思わず声が出た。
それ、いい。すごくいい。
彼が笑って、これが一番安かったんだけどな、と言った。値段じゃないの。合っているかどうか。
その後、彼はそのジャケットを着て会った女性と続いている。ジャケットのおかげとは言わないけれど、少なくとも邪魔はしなかった。

手放した二着のこと

半年後、彼はライダースとブルゾンを売った。
着なかったから、と。二着で四万円以上したはずなのに。
その話をしたとき、彼は少し悔しそうだった。でも、無駄じゃないと思う。
何が似合わないかを知るのに、四万円。安くはないけれど、そこから先の買い物が全部変わるなら、悪い授業料じゃない。

ジャケットの種類を全部覚える必要はない。着ていく場所を先に決めて、そこから形を絞る。
柔らかいテーラードが一着あれば、たいていの場面は乗り切れる。そこから季節ごとに足していけばいい。
今クローゼットにあるジャケット、最後に着たのはいつだった? 思い出せないなら、それは形じゃなくて場面が合っていないだけかもしれない。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次