「で、昨日の人どうだった?」
女友達からそう聞かれて、返す言葉はだいたい決まっています。
いい人だったよ。
この一言が、2回目はないという意味だと、男性はどれくらい知っているんだろう。
30代になるまでに、付き合う前の初デートは数えきれないほど経験してきました。
友人たちの報告も、それこそ山ほど聞いてきた。
そのなかで、いい人止まりの男性には、はっきりした共通点があるんです。
服が、とにかく無難。
白いシャツに、紺のパンツ、黒い革靴。
清潔感はあるし、どこにも失敗はない。
なのに、翌朝には顔も服も思い出せない…。
付き合う前の初デートで無難な服を選ぶのは、いい人止まりへの近道です。
清潔感だけでは、その先へは進めません。
女性の心に残るには、もうひとつ仕掛けがいるの。
初デートの女性は、男性の服を見ながら、三つの問いを順に確かめています。
並んで歩いても平気な人なのか。
今日の私のために、少しは考えてきてくれたのか、という点。
そして、もう一度会いたくなる何かがあるか。
一つ目の問い、この人と並んで歩けるか
清潔感は加点じゃなく、入場券
最初の問いは、答えが出るのがとにかく早い。
待ち合わせ場所で目が合った、その数秒で決まってしまうから。
見られているのは、服のブランドでも値段でもありません。
シャツのシワ、ニットの毛玉、首元のヨレ、パンツの裾の長さ。
それから、サイズが体に合っているかどうか。
女性は服の細部から、その人が自分の部屋をどう扱っているかまで想像してしまうの。
ここで合格しても、点数はまだゼロのまま。
落ちたら、その日はもう巻き返しがききません。
清潔感は、勝つための武器じゃなく、試合に出るための入場券なんです。
ロゴの大きなTシャツや、穴の空いたデニム、サンダルは、入場ゲートで止められる側ね。
新品は当日おろさない、太ももに残ったサイズシール
数年前、マッチングアプリで知り合った男性と、ランチに行った日のこと。
彼はおろしたてのチノパンに、真新しいシャツで現れました。
シャツの胸には、たたまれていたときの四角い折りじわがくっきり。
食事を終えて、彼が椅子から立ち上がった瞬間です。
チノパンの太ももに、縦長のサイズシールが貼られたままになっていたの。
(え、言うべき?言わないべき?)
会計のあいだも、駅までの道でも、視線が勝手にシールへ戻っていく。
改札の前で、思いきって小声で伝えました。
彼の耳がみるみる真っ赤になって、ぺりっとシールをはがす音がやけに大きく響いた。
次の日、親友への報告は、シールの人、の一言で片づいてしまいました(泣)
新しい服は、それだけで体からほんの少し浮いて見えるもの。
折りじわもシールも、着慣れない硬さも、全部ひっくるめて力みが透けてしまう。
初デートのために買った服は、少なくとも一度は洗って、一度は外で着ておく。
新品の革靴も同じで、靴ずれして足を引きずる姿は、隣で見ていて気が気じゃないのよ。
靴とにおいは、近づいたときに採点される
意外と見落とされるのが、靴の汚れ。
服を新しくしても、つま先が白っぽくすれた革靴だと、そこだけ生活感が出てしまう。
前の晩に布でひと拭きするだけなんだけどさ、それで靴の顔つきがまるで変わるの。
かかとのすり減りも、ついでにたしかめておいて。
においは、隣に座ったとたんに答え合わせされます。
香水をつけるなら、手首にひと吹きで十分。
正直言って、食事中に香りが強いと、料理の味がわからなくなるの。
洗いたてのシャツから、柔軟剤がふわっと香るくらいがちょうどいい。
そのほのかな香りを、女性は帰りの電車でふと思い出したりするんです。
二つ目の問い、今日のために考えてくれたか
行き先を聞いた時点で、服の半分は決まる
二つ目の問いで女性が見ているのは、行き先と服がちぐはぐになっていないか。
おしゃれなレストランにパーカーで来られると、軽く扱われた気がしてしまう。
反対に、公園の散歩にジャケットとピカピカの革靴だと、こちらが身構えちゃうの。
どちらも、今日の二人の時間を想像していない合図に見えるから。
だから、誘う側でも誘われる側でも、行き先はかならず事前にすり合わせて。
お店のホームページで店内の写真を見ておくだけでも、マジで違うから。
お客さんの服装の雰囲気がつかめれば、もう迷う余地はほとんどありません。
張りきりすぎた私の、ワンピース事件
偉そうなことを言っている私も、盛大にやらかしたことがあります。
20代のころ、友人の紹介で知り合った人との初デート。
行き先は、彼の行きつけのお店とだけ聞いていました。
勝手にイタリアンだと思いこんで、つやのあるサテンのワンピースに、細いヒール。
着いたのは、煙がもうもうと立ちこめる、カウンターだけの焼き鳥屋さん。
炭の上で脂がはねて、ジュウッと音が耳に飛びこんでくる。
高い椅子によじのぼろうとしたら、ヒールが足置きの金具にカツンと引っかかって…。
(ちょっと待って、私だけ結婚式の二次会みたい…)
隣の常連さんの視線が、背中にちくちく刺さる気がしました。
帰り道、ワンピースからは焼き鳥のたれの香りがしっかり漂っていたっけ(笑)
あの時、行き先をひと言だけでも確かめていれば。
服は自分を飾るためだけじゃなく、その場になじむためのものでもあるんだよね。
カフェ、ディナー、水族館で変える一枚
カフェやランチなら、シャツかニットに、きれいめのパンツがあれば足ります。
足元は、手入れの行き届いた革のスニーカーでもかまいません。
デニムで行くなら、色落ちの少ない濃紺を選んで、上品な靴で締めること。
ディナーなら、そこにジャケットを一枚足すだけ。
ネクタイまではいらないけれど、襟のあるシャツか、目の細かいニットを中に。
水族館や動物園、公園の散歩なら、歩きやすい靴と、脱ぎ着しやすい羽織りを。
館内と外では温度差があるので、すぐ脱げる一枚が頼りになる。
どこに行くにしても、迷ったら一段階だけきちんと寄せておけば外さないの。
三つ目の問い、もう一度会いたくなる引っかかりがあるか
白シャツにネイビーの男性を、女性は覚えていない
ここからが、いい人止まりと、2回目の約束の分かれ道。
付き合う前の時期の女性は、何人もの男性と初デートを重ねていることがあります。
アプリで知り合った人、紹介された人、職場の飲み会で話した人。
そのみんなが、白いシャツと紺のパンツで現れたとしたら。
知り合いの女の子は、会った男性の特徴を手帳にメモしていたそうです。
ところが服の欄は、どの人も白シャツ、紺、の文字で埋まってしまったんだとか(笑)
顔と名前と服が、頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。
はぁ…それじゃ、思い出してもらえなくて当然でしょ。
結局、無難な服は嫌われないかわりに、記憶にも残らないんです。
思わず質問したくなる一点を、ひとつだけ
いい人止まりを抜け出すには、服のどこかに、女性が質問したくなるすきを作ること。
たとえば、深い緑やからし色といった、秋らしい色のニット。
年季の入った革ベルトの腕時計や、文庫本がのぞく帆布のトート。
べっこう柄のメガネも、顔の印象をぐっとやわらかくしてくれます。
初デートは、女性の側もそれなりに緊張しているもの。
その時計素敵ですね、のひと言から話がほどけていくことって、本当によくあるの。
ただし、引っかかりはひとつだけ!
色も柄も小物も足しはじめると、今度は気合いの空回りに見えてしまう。
指輪は、左手の薬指でなくても、彼女がいるのかと勘ぐらせるので外しておいて。
一点に、自分の物語をしのばせる
引っかかりは、雑誌の真似で選ぶより、自分の好きなものから選んだほうがいい。
なぜって、質問されたあとに語れる話があるから。
旅先の市場で見つけたストール、学生時代から履き続けている革靴。
高いものである必要は、まったくありません。
理由のある一点は、話しはじめた瞬間に、その人の表情をぱっと明るくする。
少しくらい言葉に詰まっても、それはそれで微笑ましく映るもの。
女性がまた会いたいと思うのは、服そのものじゃなく、その服を語るときの顔なのよね。
秋の初デートに着ていきたい、付き合う前のメンズコーデ3選
深い色のニットに、グレーのスラックス
朝晩が冷えこみはじめた季節は、ニットの出番。
深い緑のクルーネックニットに、グレーのスラックスを合わせて。
スラックスは、センタープレスの入ったものを選ぶと脚がすっと長く見える。
足元は茶色の革靴か、黒のローファーで引き締めて。
ニットの色そのものが引っかかりになるので、小物はシンプルなままでいいの。
首元に白いTシャツを少しだけのぞかせると、顔まわりが明るく見えます。
白シャツなら、ブラウンのジャケットで温度を足す
どうしても白シャツで行きたいなら、ジャケットで秋の表情を足しましょう。
選ぶのは、ブラウンのツイードや、コーデュロイみたいに凹凸のある素材。
白シャツの清潔さに秋らしいぬくもりが重なって、ぐんと記憶に残る組み合わせになる。
ジャケットの袖丈は、シャツの袖口が1センチほど見える長さがきれい。
パンツはベージュかネイビーで、靴はジャケットに合わせた茶色を。
これならディナーにも、ちょっと背筋の伸びるお店にも、そのまま行けます。
歩くデートは、ブルゾンと革のスニーカー
水族館や公園なら、ネイビーのブルゾンを主役に。
中には、からし色のスウェットを重ねて。
その色が、そのまま今日の引っかかりになってくれる。
パンツはベージュのチノで、足元は白い革のスニーカー。
大きなリュックは背中の印象が重くなるので、荷物は小さめのショルダーにまとめて。
歩く距離が長い日ほど、靴は履き慣れたものを選んでおいてね。
館内で暑くなったら、ブルゾンをさっと腕にかければいいだけ。
初デートの彼が教えてくれた、また会いたくなる服
質問せずにいられなかった、彼の古い腕時計
今の彼と初めて会ったのは、まだ肌寒さの残る春でした。
待ち合わせの駅に現れた彼は、深い緑のニットに、グレーのスラックス。
服はとてもシンプルなのに、手首の時計だけが妙に古めかしい。
よく見ると、ガラスには小さな傷まで入っている。
カフェで向かい合って、コーヒーが半分になったころ。
どうしても気になって、その時計のことをたずねてしまいました。
祖父の形見で、止まっていたのを自分で修理に出したんだ、と彼。
そこから、おじいさんの話、時計屋さんの話、彼の子どものころの話へ。
カップの中のコーヒーは、とっくに冷めきっていました。
突然、窓の外がすっかり暗くなっていることに気づいたの。
まさか、三時間もたっていたなんて。
改札の前で、彼が少し照れたように言いました。
「次は、あの時計屋さんの近くでごはんでもどう?」
うなずいたとき、胸の奥でトクン、と小さな音が鳴った気がした。
(この人のこと、もっと知りたいかも…)
その夜、親友に送った報告は、いい人だった、ではありませんでした。
また会うことにした、の一行だけ。
初デートの服は、次に会う理由を作るためにある
付き合う前の初デートで、服がしてくれることは二つだけ。
隣にいて落ち着ける人だと、まず思ってもらうこと。
それから、もう一度会う理由を、そっと手渡すこと。
清潔な服で一つ目を満たして、たった一点で二つ目を叶える。
欲ばらなくていいんです。
あの日の彼の時計は、今も彼の手首で時を刻んでいます。
ガラスの小さな傷を見るたびに、カフェで冷めていったコーヒーを思い出すの。
初デートの服が本当に運んでくるのは、二回目の約束なのかもしれません。
