黒スニーカーは無難な靴じゃない。いちばん粗が出る
迷ったら黒。どんな服にも合うし、汚れも目立たない。
そう信じている男性、たぶんかなり多いですよね。
私はそこに真っ向から反対したい。黒ほど手抜きがバレる靴はありません。
白は汚れたら一目瞭然。だから誰でも洗うし、拭く。
黒は隠してくれる気がする。その安心が、そのまま放置につながる。
二年、三年と履いたあと、じわっと表面が白く粉をふいてくるんです。あれ、すれ違いざまでもわかりますよ…。
汚れが目立たないという安心がいちばん危ない
黒が隠してくれるのは泥だけ。色あせと毛羽立ちは、むしろ黒のほうが浮きます。
新品のときの深い黒って、光を吸い込むような色をしていますよね。それが薄くなると、グレーとも茶色ともつかない中途半端な色に変わる。
本人は毎日見ているから気づかない。たまに会う人だけが気づく。この時差が残酷なんですよ。
女が最初に見るのはつま先じゃなく、かかと
これ、言うと驚かれるんですけど。
男性が歩いて近づいてくるとき、私たちの視線が引っかかるのは、すれ違ったあとのかかと。
踏みつぶされて外側に倒れていたり、履き口がへたって波打っていたり。前からは絶対に見えない場所です。
かかとを踏んで履くのが癖になっている人、意外といます。楽なのはわかる。でも、あの一手間を省いた事実が、後ろ姿にずっと残ってしまう。
デザインの話じゃなく、扱い方の話。そっちのほうが伝わってしまうんですよね。
白ソールを選んだ彼と、雨上がりの駅前
去年の春、友人の紹介で何度か会った人がいました。
三回目のデート、待ち合わせは駅前。雨がやんだばかりで、アスファルトがまだ濡れていた日。
彼が改札から出てくるのが見えた瞬間、私の視線が下に落ちました。
足元だけ浮いて、脚が短く見えた
黒いスニーカーでした。悪い靴じゃない。ちゃんとしたブランドの、細身のやつ。
ただ、ソールだけが真っ白。しかも厚め。
黒いパンツの裾から、白いかたまりがぼこっと出ている感じ。そこで脚がぷつんと切れて見えたんです。
実際の身長は高いのに、写真に撮ったら重心が下がる。あの現象、白ソールが原因になっていることが本当に多い。
黒スニーカーを買うなら、ソールまで黒を選んでほしい。初心者ほど、そこを外すと立て直せません。
靴下の白が全部持っていった
とどめは靴下。
彼が階段を上がるとき、裾がめくれて白いくるぶし丈が見えました。
黒いパンツ、黒い靴、そのあいだに白の帯。まるでそこだけ蛍光ペンを引いたみたいで。
私は前を歩きながら、鞄の持ち手をぎゅっと握り直していました。何を言えばいいのかわからなくて、たぶん次の会話までの数秒、口が動かなかったと思う。
彼はいい人でしたよ。話も面白かった。
それでも、あとで友人に写真を見せたとき、真っ先に返ってきた言葉が靴のことだった。悔しいけど、そういうものなんです。
決まるかどうかは、足首の3cmで九割
黒スニーカーのコーデを検索すると、上下の色合わせの話ばかり出てきます。
でも実際に見え方を左右しているのは、パンツの裾と靴の履き口のあいだ。たった数センチの空間。
ここが整っている人は、Tシャツにデニムでも様になる。ここが崩れていると、何十万円分の服を着ても足元で止まります。
裾はくるぶしの少し上で止める
裾が長くて靴の上にたまっていると、そこで生地がもさっと折れて重く見える。
逆に短すぎると、脚だけ寒そうに見えてしまう。
狙いはくるぶしの骨がぎりぎり隠れるか隠れないか。歩いたときにちらっと足首が見える長さです。
裾上げに出すのが面倒なら、家で一回だけ折る。ロールアップは二回以上巻くと太く見えるので、細く一折り。
このひと手間で、同じ靴が別物になります。私は男友達に何度もやらせて、全員が鏡の前で黙りましたから。
靴下は肌色でも真っ黒でもない一手
黒い靴に黒い靴下。無難ではあるけれど、面がのっぺりして、足首から下が一枚の板みたいに見えます。
かといって白は、さっきの駅前の彼の通り。
私が推したいのは、チャコールグレーか、深いネイビー。あとは、黒に細いラインが一本だけ入ったもの。
黒からわずかにずらすと、境目がやわらかくなって、足首に奥行きが出る。
夏に素足で履く場合も、フットカバーの色は必ず靴の内側と近い色に。白がのぞいた瞬間、清潔さより無防備さのほうが先に伝わってしまいます。
モデル別に、どこで転ぶかを見ていく
形ごとに、外れる場所が違います。ここは具体的に。
ローテクは細さがすべて
薄いソールの、いわゆる細身のタイプ。これは黒との相性が抜群にいい。
条件は、パンツも細めであること。太いパンツに細い靴を合わせると、上が重くて下が頼りなくなる。
それと、シューレースは黒のまま使ってください。ここを白に替える人がいますけど、せっかく統一した黒が分断されます。
厚底系は上を絞らないと沈む
ボリュームのあるスニーカーを黒で持つのは、けっこう強い選択。うまくいけば足元がどっしりして、上半身が軽く見えます。
失敗するのは、上下ともゆったりしたときです。全身が丸くなって、体格が実際より二回りくらい大きく映る。
上に厚みのあるものを着る日は、パンツをテーパードにする。そのくらいの引き算でちょうどいい。
レザーの黒は休日より通勤向き
つるりとした黒革のスニーカーは、スラックスと合わせたときの収まりが本当にきれい。
ジャケットを羽織る日、革靴だと気張りすぎる。でもキャンバスだと軽すぎる。その隙間を埋めてくれます。
気をつけたいのは、シワの入り方。履きジワが深く刻まれると、そこだけ色が抜けて白く筋が走る。
甲の部分にクリームを薄く塗るだけで、寿命が一年は変わりますよ。
キャンバスは色が抜ける前提で買う
布地の黒は、洗うたびに色が薄くなります。これはもう仕方ない。
だから高いものを大事に履くより、手ごろな一足を一年で交代させるほうが、結果として感じよく見える。
色が抜けたキャンバスを何年も履いている人を見ると、節約というより時間が止まっている印象になってしまう。もったいないんです、その人自身は素敵なのに。
全身黒はモテない、という定説への異論
黒でまとめると重い、暗い、怖い。ネットではそういう扱いをされがちですよね。
私の実感は逆です。黒でまとめた男性、けっこうドキッとします。
条件がひとつあるだけ。
足元に黒を置いたら、上のどこかで黒を返す
靴だけが黒で、上は明るい色。この組み合わせだと、足元が浮いて見えることがある。
だから、鞄でも時計のベルトでも帽子でもいい。視線の上のほうに黒をひとつ置く。
そうすると目線が下と上を行き来して、全身がひとつにまとまる。
三色までにおさめろ、という定番の教えがありますけど、黒はその一色に数えなくていいくらい特別だと思っています。
素材が違えば、黒は重ならない
全身黒が重くなるのは、同じ質感の黒を重ねたときだけ。
たとえば、綿のTシャツの黒、ウールのカーディガンの黒、レザースニーカーの黒。同じ色なのに、光の返り方が全部違う。
朝の光の下で並べてみるとよくわかります。ざらっとした黒、しっとりした黒、つやのある黒。
この差があると、暗さじゃなくて深さに見えるんですよ。
逆に、上下ともつるつるした化繊の黒だと、のっぺりして安く映る。素材で分けるだけ。それだけです。
手入れをしている人の靴は、歩く音まで違う
これは感覚的な話に聞こえるかもしれないけれど、本当にそう感じています。
かかとが崩れていない靴は、歩いたときの音がそろっている。カツン、カツンと一定で。
へたった靴は、着地のたびにぺたぺたと湿った音が混じる。隣を歩いていると、耳のほうが先に気づきます。
五分の乾拭きで戻ってくる
黒スニーカーの手入れは、思っているより簡単。
乾いた布で全体をひと拭き。ソールの側面についた黒ずみを消しゴムでこする。それだけで、当日の見え方が変わります。
布地なら、色あせた部分に専用のスプレーを軽く。革なら、クリームを米粒くらい。
週末の夜、テレビを見ながらでいい。この五分をやっている人の靴は、二年目でも新品の顔をしています。
二足で回す人の余裕
毎日同じ一足を履くと、内側が乾く時間がなくなります。湿ったまま履き続けた靴は、型が崩れるのも早い。
黒を二足持って、一日おきに替える。それだけで両方の寿命が倍近くのびる。
一足に予算を全部つぎ込むより、そこそこの二足を交互に。この選び方をしている男性、正直かなり信頼できると思っています。
買い替えの合図は、履き心地じゃなく写真に出る
まだ履ける、という基準で持ち続けると、たいてい一年遅れます。
判断が早いのは写真。
誰かと撮った全身写真を見返して、足元だけ色が沈んで見えたら、もう替えどき。
自分の目は慣れてしまうけれど、画面に写った黒は正直です。ぐしゃっとつぶれた履き口も、抜けた色も、そこにそのまま出る。
黒スニーカーは、選んだ時点では誰でも合格点。差がつくのは、そのあと何をしたか。
今日、玄関の一足を手に取って、かかとの外側とソールの側面を見てみてください。そこに答えが出ているはずです。
