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ニット帽は浅くかぶるな、深くかぶる男が急に垢抜ける理由

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コンビニの前で、彼が帽子を直した瞬間

十二月の夜、待ち合わせの数分前。
コンビニのガラスに映った自分を見て、彼がニット帽をくいっと引き上げました。おでこが出て、生え際が全部見える位置まで。
その一秒で、印象がまるごと変わったんです。さっきまで街に溶けていた人が、急に頭でっかちになった。
え、なんで上げちゃうの
声に出しかけて、飲み込みました。彼にとっては、たぶん整えたつもり。前髪が潰れるのが嫌だったのかもしれない。
その日、私はずっとその帽子の位置が気になっていました。話の内容が半分くらいしか頭に入ってこなかった(笑)。

ニット帽のコーデを調べる人が求めているのは、たぶん、垢抜けた合わせ方でしょ。何色を選ぶか、どんな服と組むか、似合わない顔型はあるのか。
だけど、色より形より、先に決まるものがあります。かぶる深さ。
言い切ります。ニット帽は深くかぶるほど格好よくなる。眉毛に触れるくらいまで下ろしていい。浅くちょこんと乗せるのが自然だと思っている人、たぶん百人中九十九人。私はそこに真っ向から反対します。

浅いと、頭が丸ごと大きくなる

帽子を上に乗せると、頭のてっぺんに余った布が立ち上がります。
その分だけ縦に伸びて、顔から頭頂までの距離が長くなる。結果、頭が実際より大きく見えてしまう。
深くかぶると、余った布が後ろに逃げて、頭の形に沿います。輪郭が小さくまとまる。
日本人の顔立ちは、後頭部が平らな人が多いと言われます。だからこそ、後ろに布を送って厚みを作ったほうが横から見た形が整うんですよ。

おでこを隠すと、目が主役になる

生え際が見えていると、視線がそこへ行きます。特に、髪が薄くなり始めた人は自分でも気にしている場所。
眉の少し上まで下ろすと、隠れる。かわりに、目と鼻と口だけが残ります。
顔の中で情報量が減って、目元に集中する。ちょっとした演出みたいなものです。
実際、深くかぶった男性の写真と浅い写真を並べると、前者のほうが目が印象的に見える。試してみてほしい。

どこまで下ろすか、その一線

深くと言っても、限度はあります。やりすぎると別の問題が起きる。

眉毛に触れるか、その一センチ上

眉の上に少しだけ隙間が残るくらい。ここが上限であり、正解の位置。
眉が完全に隠れると、表情が読めなくなります。目つきだけが強調されて、少し怖い。
逆に、指三本ぶんもおでこが出ていたら、それは浅すぎ。
鏡を見ながら、下ろせるところまで下ろして、そこから半分だけ戻す。この方法が一番早いです。

耳は、隠していい

耳を出すか隠すかで悩む人がいます。
私は隠す派。耳が出ていると、そこに横の広がりが生まれて、顔が大きく見えるんです。
耳の上半分が隠れるくらいまで下ろすと、顔の輪郭が縦に整理される。それに、単純に暖かい(笑)。
ただ、眼鏡をかけている人は、耳の上でつるとぶつかることがある。その場合は、フレームを先にかけてから帽子を下ろす順番で。

形の選び方で、難易度が変わる

どんなに深くかぶっても、形が合っていなければ苦しい。

折り返しのあるものを、まず一つ

リブが二重になっていて、ふちを折り返すタイプ。これが最も失敗しません。
折り返しの厚みが、額のあたりで一本の線を作ってくれる。その線が顔と帽子の境目になって、輪郭がはっきりします。
折り返しの幅は、四から五センチくらい。広すぎると重く、狭すぎると存在感が消える。
折り返さないタイプは、上級者向けです。頭の形がそのまま出るので。

てっぺんに何もついていないもの

ぽんぽんのついた帽子。可愛いです。若い子には似合う。
けれど三十代以降がかぶると、そこだけ子どもっぽさが残ります。全身がきちんとしているほど、頭の飾りが浮く。
それと、頭頂に余った布が長く伸びるタイプ。あれも縦に伸びて見えるので、慎重に。
丸くこぢんまり収まるものを選ぶと、大人の顔立ちに沿ってくれます。

編み目の細かさで、印象が変わる

太い糸でざっくり編まれたものは、カジュアル寄り。アウトドアの空気が出ます。
細い糸で目が詰まったものは、コートにも合う。ウールやカシミア混だと、街の格好に馴染みます。
持つなら、細かい編みのものを一つ。使える場面が圧倒的に多いので。

友人が、五年ぶりに帽子をかぶった話

男友達の一人が、ずっとニット帽を避けていました。
理由が、似合わないから。若い頃に一度かぶって、周りに笑われたことがあるらしい。あだ名までついたと言っていました。
去年の冬、彼が寒がっているので、私が自分の持っていたグレーのニット帽を貸したんです。深めにかぶせて、後ろの布を少し引っぱって整えた。
鏡を見た彼が、しばらく黙っていました。
それから、これ、俺?と。
声が半分裏返っていて、私は笑ってしまった。
似合わなかったんじゃなくて、かぶり方を知らなかっただけ。二十年ぶりに答え合わせをしたようなものです。
その冬、彼は同じ色を自分で買いました。今も持っているらしい。

髪型は、諦めていい

帽子をかぶると前髪が潰れる。だから浅くかぶる。この理屈で失敗している人が多い。
潰れるのは、もう仕方ないです。かわりに、脱いだあとを気にしないで済むように、短めの髪にしておく。
サイドが短くて、上に少し量がある髪型なら、帽子を取ってもすぐ戻ります。
逆に、時間をかけてセットした髪を守るために帽子を犠牲にするのは、順番が違うと思っています。かぶっている時間のほうが長いんだから。

合わせる服のこと

帽子単体で決まっても、全身がちぐはぐだと意味がありません。

上半身に、もう一つ厚みを

薄いコート一枚にニット帽だと、頭だけ冬になります。
マフラーか、厚手のニットか、ボリュームのあるアウターか。首から上と、その下の重さを合わせる。
逆に、真冬のダウンに薄いニット帽だと、頭が小さく取り残される。素材の厚みを揃えると、全身がまとまります。

色は、足元と揃えると静か

ニット帽の色を、靴か鞄と合わせる。この方法が一番簡単です。
上と下に同じ色が二点あると、視線が行き来して全体がつながる。
黒、グレー、生成り、濃い緑。このあたりは何にでも合います。
明るい色を選ぶなら、他を全部静かにすること。頭は一番目立つ場所なので、そこに色を置いたら他は引く。

コートの襟との関係

立ち襟のコートにニット帽をかぶると、首元と頭で布が渋滞します。
その場合は、帽子を少しだけ後ろにずらす。前は眉の上、後ろは襟に触れない位置。
首の後ろに指を入れて、隙間があるか確かめてみてください。詰まっていたら、少し調整するだけで全体が抜けます。

私が地味にときめく、脱ぐ動作

最後にひとつ、余談みたいな話を。

店に入って、すっと取る人

飲食店に入った瞬間、帽子を取ってポケットに入れる。あの動作、なんだかいいんですよ。
髪がぺたんこになっていても、それはそれで。むしろ、気にしていない姿のほうが余裕に見える。
逆に、店内でもずっとかぶったままの人。その人なりの理由があるとは思うけど、食事の席では少しだけ気になってしまう。
胸のあたりが、ふっと緩む瞬間があるんです。帽子を取ったときに現れる、少し崩れた髪。あれは作れない。

形が崩れたら、洗って干す

ニット帽は汗と皮脂を吸います。
折り返しの内側が黒ずんできたら、洗いどき。手洗いで、平らに広げて干す。ハンガーに掛けると伸びます。
一シーズンに二回洗うだけで、来年もきれいにかぶれる。
伸びきった帽子は、深くかぶってもずるずる下がってくる。あれは、どうにもならないので買い替えを。

帽子の位置なんて、たった数センチの話です。
それでも、その数センチで頭の形が変わって、目つきが変わって、全体の空気まで動く。
次に鏡の前でかぶるとき、いつもより指一本ぶん下げてみてください。そこが、たぶんあなたの位置です。

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