顔そのものは、小さくならない
深夜一時の洗面所。
私は頬にローラーを当てて、こりこりと転がしていました。もう三か月、ほぼ毎晩。
翌朝、鏡をのぞく。
昨日と同じ顔がそこにいる。
指でフェイスラインをなぞって、はぁ…と息が出ました。
その夜に気づいたことを、先に書いてしまいます。顔は痩せません。骨も、そこに乗っている脂肪も、数日でどうにかなるものじゃない。
99人には反対されると思う。小顔マッサージという言葉が世の中にあふれているから。
それでも言い切ります。あれで消えているのは、むくみだけ。
ローラーを三か月転がした夜のこと
私の場合、手に入ったのは小顔じゃなくて頬の赤みでした。
毎晩こすったせいで、こめかみの下あたりがひりつくようになって。ファンデーションを塗るとき、指が止まるようになった。
やりすぎたんです、完全に。
効いた気がするのは、血の巡りが良くなって一時的に水分が動いたから。翌日の夕方には元に戻る。
その繰り返しに三か月使った自分を思い出すと、今でも肩のあたりが重くなります。
それでも見え方は変えられる
じゃあ諦めるしかないのかというと、そんなことはなくて。
顔の大きさは変わらなくても、顔が大きく見えるかどうかは変えられる。ここが分かれ目です。
女性が誰かを見て、あ、この人小顔だな、と感じる瞬間。実は顔を見ていません。
見ているのは、顔の周り。首の長さ、肩の位置、髪の量、襟の開き方。
顔は変えられないけれど、その周囲は今日から変えられる。話はそこからです。
むくみの原因は、前の日の夜にある
朝、顔が一回り大きい日ってありますよね。
あれは顔の問題じゃなく、その前の十二時間の問題。
汁を残すだけで朝が違う
塩を摂ると、体は水を抱え込みます。抱え込んだ水は、寝ているあいだに重力から解放されて顔へ移動する。
だから翌朝ぷっくりする。単純な話なんですよ。
食べるものを我慢しろとは言いません。ラーメンも味噌汁も、食べればいい。
汁を最後まで飲み干すのだけをやめてみてください。それだけで翌朝が変わります。
お酒も同じ。飲んだ分と同じくらいの水を挟む。この地味な一手が、翌朝の顔にそのまま出る。
飲み会の翌日に妙に顔が丸い人、たいてい水を一滴も飲んでいません。
枕が低い人ほど、朝がぱんぱん
これ、盲点。
頭が心臓より低い位置にあると、顔に水が集まりやすくなります。
枕を少し高くする。それだけで、朝の顔が締まる人がいる。
うつ伏せで寝る癖がある人も要注意。片側だけ押しつぶされて、朝の左右差がくっきり出ます。
睡眠時間そのものも効きます。三時間台の朝と、七時間眠った朝。顔の重さが違うのは、鏡を見なくても頬の感覚でわかりますよね。
奥歯、いま当たっていませんか
ここからが本題かもしれない。
顔の幅を広げている犯人として、いちばん見落とされているのが噛みしめです。
噛みしめる癖は顎を育てる
エラの部分にある咬筋という筋肉は、使えば使うほど厚くなります。腕と同じ。
仕事中、スマホを見ている時間、運転中。無意識に上下の歯を当てている人、かなり多い。
本来、口を閉じているとき歯は触れていません。数ミリ浮いているのが自然な位置。
ずっと当てていると、頬骨の下から顎にかけて、じわっと張り出してくる。
私の知り合いに、仕事のストレスが強い時期だけ顔が四角くなる人がいました。太ったわけじゃない。噛んでいただけ。
舌の位置をひとつ変える
やり方は拍子抜けするほど簡単で。
舌の先を、上の前歯の少し後ろのふくらみに軽く付ける。それだけ。
この位置に舌があると、奥歯が自然に離れます。噛みしめようがなくなる。
最初の一週間は舌が疲れます。私も顎の下がだるくなりました。
でも、三週間くらいで無意識にできるようになる。顔の張りが少し引いて、頬の丸みがすとんと落ち着く。
歯を食いしばる癖が強い人は、歯科で相談したほうが早い場合もありますよ。
集まりで一人だけ小顔に見えた男の話
去年の冬、十人くらいで集まる飲み会がありました。
男性が五人。並んで座っていて、そのうち一人だけ、明らかに顔まわりがすっきりして見えたんです。
体格はむしろ大きいほう。顔だって、たぶん小さくない。
それなのに写真に写ったとき、彼だけ首から上が締まっていた。
彼だけが襟のある服を着ていた
理由はあとから写真を見返して判明しました。
ほかの四人は全員、丸首のニットかパーカー。
彼だけがシャツの襟を立てて、ボタンをひとつ開けていた。
首すじが縦に見えていたんです。それだけで顔と胴のあいだに距離が生まれて、頭が上に浮いたように映る。
私は帰りの電車でその写真をずっと拡大していました。指先で何度も画面を広げて、そのたびに納得して。
服で顔の大きさが変わる。冗談みたいだけど、写真は正直でした。
切った髪はサイドの1cmだけ
後日、本人に聞いてみたんです。何かしてるの、と。
返ってきた答えは、美容師さんにサイドだけ削ってもらってる、でした。
トップは残して、耳の上から後頭部にかけての厚みを落とす。切る量にすると1cm程度。
横の膨らみが減ると、顔が縦に見える。ボリュームを足すんじゃなく引くんですね。
髪を伸ばして顔を隠そうとする人がいますけど、あれは逆。サイドに厚みが出るほど、顔の幅が増して見えます。
顔まわりの余白を削るのは、服の仕事
顔痩せと検索してたどり着くのはたいていエクササイズ。でも、即効性で言えば服が圧倒的に上です。
首を出す人が得をする
詰まった襟は、顔と肩をつなげてしまいます。境目が消えて、頭が肩に埋まったように見える。
Vネックまで開ける必要はありません。丸首でも、少しゆとりのある開きを選ぶだけで違う。
シャツなら、第一ボタンを外して襟を軽く立てる。バンドカラーは首を短く見せるので、顔の大きさが気になる人には向きません。
眼鏡は顔の幅で選ぶ
眼鏡は顔の大きさを測る物差しになります。
フレームの横幅が顔の幅より内側で終わっていると、顔がはみ出して大きく見える。
逆に、フレームの端が顔の縁とほぼそろっていると、目の錯覚で顔が締まって見えるんですよ。
色は黒よりべっ甲やメタルのほうが軽い。線が細いほど、顔の面積が主張しません。
帽子とマフラーで盛らない
ニット帽で頭にボリュームを足すと、そのぶん顔も大きく見えます。かぶるなら薄手のリブを浅めに。
マフラーをぐるぐる巻きにするのも同じで、首が消えた瞬間に顔だけが上に残ります。
巻き方をひと巻き減らして、首を数センチ見せる。冬の写真写りが変わるのは、たいていここです。
体重を落とすのは、いちばん最後でいい
顔を小さくしたい人が真っ先に手をつけるのが食事制限。私はそこに一番反対しています。
顔から先に痩せた人が払う代償
私自身、二十代のころに短期間で体重を落としたことがあります。
真っ先にこけたのは頬でした。フェイスラインは確かに出た。
でも、目の下がくぼんで、頬に影が落ちて、写真に写った自分がやけに老けて見えたんです。
友人に、最近疲れてる、と心配された。あの時の胸のあたりのざらっとした感覚は、今も覚えています。
急に落とすと、顔からハリまで抜けていく。小さくなるより先に、くたびれる。
落とすなら、ゆっくり
体重が減れば顔の脂肪も減る。それは本当。ただし数か月かけて、が条件です。
むくみを抜く、噛みしめをやめる、髪と襟を整える。この三つを先にやってから、必要なら食事と運動へ。
順番を逆にした人が、いちばん遠回りしています。
鏡は慣れる。写真は慣れてくれない
毎日鏡を見ている人ほど、自分の変化に気づけません。
目が慣れてしまうから。昨日の顔と今日の顔を、脳が勝手にならしてしまうんです。
だから記録するなら写真。同じ場所、同じ明るさで、正面から一枚。週に一度でいい。
一か月分並べたとき、初めて差が見えます。変わっていない週があっても、そこでやめないこと。
顔は痩せない。でも、顔の見え方は今日の夜から動かせる。
枕を少し高くして、奥歯を離す。それだけで、明日の朝の一枚は違うはずです。
