午後3時のオフィスって、足音がやけに響くんです。
キーボードを叩く音と、空調の低いうなり。
そこへペタン、ペタン、と間の抜けた音が近づいてくる。
顔を上げなくても、誰が歩いてきたのかだいたいわかっちゃうのよね。
女性がオフィスサンダルを見ているのは、あなたが油断した午後
通勤の革靴が見られるのは一瞬、デスクの下は一日中
朝のエレベーターで、男性の靴をじっくり観察している女性なんてまずいません。
眠いし、スマホは見たいし、前髪の具合も気になるし。
どれだけ磨きこんだ革靴でも、視界に入るのはせいぜい30秒でしょう。
話が変わるのは、席に着いてから。
座っている女性の目線って、ちょうど立っている男性の腰のあたり。
資料を手に話しかけに来てくれたとき、ふと目を落とせば、そこに足がある。
コピー機の前で順番を待つ時間も同じ。
向かいの席で脚を組み替えられたら、足元が嫌でも飛びこんでくる。
朝の30秒と、デスクで過ごす8時間。
どちらの足元が記憶に残るかなんて、比べるまでもないよね。
オフィスサンダルを探すあなたが本当に知りたいのは、楽な一足の名前とは少し違う。
靴を脱いだあとも、きちんとした人のままでいられる一足。
探すべきは、そっちです。
オフィスサンダルに革靴以上のお金をかけていい理由
靴売り場で数えきれないほどの靴を見送ってきて、学んだことがひとつ。
通勤靴って、想像以上に過酷な毎日をくぐり抜けているもの。
雨の日の水たまり、満員電車で踏まれるつま先、駅の階段の角。
どんなに手入れをしても、傷むときは傷む。
では、オフィスサンダルは?
空調の効いた室内から、一歩も外へ出ない。
泥も雨も知らないから、いいものを選べば驚くほど長く付き合えます。
1万円の一足を3年履いたとして、1日あたり十数円。
自販機の缶コーヒーより安いなんて、笑っちゃうでしょ?
それに、デスクの下は、男性にとって誰も見ていないはずの場所。
だからこそ、そこには素の自分がにじみ出ます。
女性がこっそり気にしているのは、気を張っているときの顔より、力を抜いたときの顔。
革靴が名刺なら、オフィスサンダルは素顔。
名刺だけ立派に刷って、すっぴんは放ったらかしにしている。
そんな男性、けっこう多いんですよね…。
百年の恋が冷めた、オフィスサンダルのペタンという音
憧れの先輩の足元で起きたこと
入社2年目の夏、ひそかに憧れていた先輩がいました。
3つ年上で、シャツの襟がいつもパリッとしている人。
プレゼンのときの落ち着いた声も、つやのある革靴も、全部が大人に見えて。
ある日の午後、資料のことで質問しに、先輩の席まで歩いていった。
胸の奥がとくとく騒ぐのを感じながら、声をかける。
「ああ、それね。ちょっと待って」
椅子がくるりと回り、先輩が立ち上がった、その瞬間。
ペタン。
ズルッ、ペタン。
視線が勝手に下へ吸い寄せられました。
色の抜けたビニールのサンダルに、素足。
かかとは白く粉をふいていて、親指の爪がわずかに伸びている。
(まさか…これ、先輩の足?)
追い打ちをかけるように、ふわっと、なんとも言えない匂いまで漂ってきて。
さっきまでうるさいくらいだった鼓動が、すーっと静まっていきました。
説明は親切だったのに、一言も覚えていない。
席に戻ると、指先だけが妙に冷たくなっていたっけ。
先輩に、落ち度なんてない。
仕事はできるし、後輩の面倒見もいい。
ただ、あの一足が、私の中の先輩をまるごと上書きしてしまった。
恋心って、こんなにあっけなく引いていくのね。
何年たっても、顔より先にあの音を思い出すんだから困ったもの(笑)
私も人のことは言えない、モコモコスリッパ事件
偉そうに書いていますが、私にも消したい過去があります。
入社4年目の冬、デスクで履いていたのは友達にもらったモコモコのスリッパ。
つま先にウサギの耳がついた、淡いピンクのやつ。
(職場でそれはない。今の私なら全力で止める)
12月の朝、突然の来客があって、しかも受付はたまたま無人。
案内役が、ぽんと私に回ってきた。
立ち上がって一歩踏み出したところで、はっと気づく。
履き替える時間なんて、もうどこにもない…!
取引先の部長さんの目線が、一瞬だけ足元に落ちたのを見てしまって。
頬から首まで、一気にカッと熱くなりました。
会議室までのたった20メートルが、マラソンのゴール前のように遠かったな。
あの冬、骨身にしみました。
足元を見ているのは、隣の席の同僚だけではないと。
お客さまも、他部署の人も、清掃スタッフさんも、エレベーターで乗り合わせる人も。
机の下って、意外と人前なんです。
女性が職場で引いてしまう足元の正体
この話を同じフロアの女子たちにランチでしてみたら、まあ出るわ出るわ!
歩くたびに鳴るペタペタ音、椅子の上で素足のままあぐら、伸びっぱなしの爪。
脚を組んで、サンダルをつま先に引っかけてぶらぶら揺らす癖も、評判は散々でした。
商談中の会議室へ履き替えずに現れて、ヒヤッとさせた猛者の話まで。
「そのままビルの1階のコンビニに行く人、家の近所感すごくない?」
これには全員が、フォークを持つ手を止めてうなずいていましたね。
こうして並べてみると、サンダルそのものの話はほとんど出てこない。
女性が引いているのは値段やブランドではなく、気の抜け方。
逆に言えば、そこさえ押さえれば、足元はちゃんと味方になってくれる。
メンズのオフィスサンダル、モテる選び方はこの4つ
かかとが包まれる形を選ぶと、足音が消える
ペタペタ音の犯人は、ほぼ割れています。
一歩ごとにサンダルの底がかかとから離れて、床を叩いてしまうから。
足の甲だけで留めるタイプほど、この音は大きくなる。
狙い目は、かかとまで包むスリッポン型や、ストラップを後ろに掛けるクロッグ型。
モロッコ生まれの室内履きバブーシュも、かかとを立てればぐんと静かに。
つま先まで覆われていれば、指先や爪を人目にさらさずに済む。
一足でふたつの悩みが片づくなんて、ありがたすぎません?
靴売り場時代、お客さんによく教えていた裏ワザがあって。
試し履きしたら、店の床をほんの10歩だけ歩いてみること。
耳を澄ませて、パタンと鳴るものは候補から外す。
これだけで、買ってからの後悔はずいぶん減らせます。
色は黒か焦げ茶、素材は革かスエード
色で迷ったら、黒か焦げ茶を選んでおけば失敗しようがない。
ネイビーやチャコールグレーも、スラックスとよくなじみます。
避けてほしいのは、蛍光色やキャラクター柄、それから大きなロゴ入り。
机の下から主張してくる足元って、真面目な話の最中でも気が散っちゃう。
素材は、つるっとした合成樹脂より、革かスエードを。
ゴムっぽいサンダルは、どうしてもお風呂場やベランダを連想させる。
革やスエードなら、それだけで顔つきが靴に近づきます。
決めきれないときは、3メートルの法則を思い出して。
向こうの島の席から眺めて、サンダルだとバレなければ合格です。
これ、マジで使えるから。
パンツの裾から足元まで色がつながると、脚もすらりと長く見えるし。
座り仕事で丸まりがちな後ろ姿が、立ち上がったときに見違えますよ。
疲れないサンダルほど、だらしなく見える
一日中履くものだから、疲れない一足がほしい。
その気持ち、痛いほどわかる。
でも、あえて水を差しますね。
ふかふかすぎるサンダルは、男性の立ち姿をだらしなくするから。
足裏がマシュマロみたいに沈みこむと、足を持ち上げるのが面倒になってくる。
そのうちすり足になって、床をズルズルこすっているの。
座れば座ったで、机の下へ脚を投げ出したくなるし。
楽さと引きかえに、姿勢ごと溶けていくイメージかな。
私の推しは、踏みしめたときにほどよい硬さを感じる一足。
土踏まずを下から押し返してくれる、しっかりめの中敷きが目印です。
足を入れたとたん、背中がしゃんと伸びる感覚があれば当たり。
もちろん、痛いのは論外ですよ。
適度な緊張感が残るくらいが、職場ではちょうどいい。
とろける履き心地は、家に帰ってからのお楽しみ。
夏と冬で素材を替える
一年中同じサンダルで通すなんて、もったいない話。
夏は、足がとにかく汗をかく季節です。
内側まで革張りのものや、コルクの中敷きは、湿気を吸ってくれる頼もしい存在。
冬になったら、フェルトやウールの室内履きにバトンタッチしましょ。
ただしモコモコ系には気をつけて…ウサギの耳が証人です(泣)
形の整ったフェルトなら、あたたかさと清潔感が両立できるので。
季節ごとに履き分けると、それぞれを休ませる時間も自然と増えていきます。
実はこの休息こそ、臭いを遠ざけるいちばんの近道。
オフィスサンダルに靴下はダサい?素足のほうがよほど危ない
サンダルに靴下なんてダサい。
おしゃれに敏感な男性ほど、そう信じているかもしれません。
でもオフィスでは、その常識をいったん手放してみて。
素足でサンダルを履くと、指の毛も、かかとの角質も、爪の伸び具合も丸見え。
夏の海辺なら気にならないものが、オフィスの白い照明の下では急に生々しくなるのよ。
しかも素足の汗は、そのままサンダルに染みこんでいく。
臭いのもとを、自分でせっせと育てているのと同じことです。
靴下の色と丈で差がつく
色合わせは、サンダルかパンツ、どちらかにそろえるだけで十分。
黒いサンダルなら黒かチャコール、ブラウンならネイビーや深い茶色。
白い厚手のスポーツソックスだけは、部活帰りの中学生っぽくなるのでお休みさせて。
丈は、座って脚を組んでもすねが見えない長さを。
裾と靴下のすき間から素肌がのぞくと、どういうわけか隙だらけの印象に。
不思議よね。
かかとの開いたサンダルだと、靴下のかかとまでばっちり見えます。
生地が薄くなって透けていたり、毛玉がびっしりついていたり。
席に座った男性に話しかけると、椅子の下のかかとが、ちょうど見下ろす位置にある…。
靴下は消耗品と割り切って、半年ごとに総入れ替えするのがおすすめ。
臭い対策は2足のローテーションで決まる
臭いのことだけは、誰も面と向かって教えてくれません。
同僚にそんなこと言えたら、苦労しないって。
だから、自分で先回りしておくしかないの。
何より確実なのは、2足を1日おきに履き替えること。
汗を吸いこんだサンダルは、完全に乾くまでに丸一日以上かかることだってある。
毎日同じ一足を履き続けるのは、生乾きのタオルで毎朝顔を拭くようなもの。
金曜の帰りには袋に入れて持ち帰り、週末は風通しのいい日陰でひと休み。
中敷きを固く絞った布でさっとぬぐうだけでも、翌週がまるで別物です。
机の下に出しっぱなしにせず、退社するときは引き出しの中へ。
見た目の生活感まで、すっと消えていく。
忘れられないのは、ある夏の夕方。
隣の席の男性が、サンダルからそっと足を抜きました。
ムワッ。
空気の色まで変わった気がして、キーボードの上で指が固まる。
息を止めたまま、首筋がじっとり湿ってくる。
時計の秒針は、のろのろとしか進まない。
はぁ…あれだけは、二度と味わいたくない。
オフィスカジュアルでサンダル出社はありか
答えを決めるのは規則より、その日の予定
服装の決まりがゆるい会社も、ここ数年でぐっと増えました。
とはいえ、規則でサンダルが許されていても、歓迎されているとは限らない。
そこを取り違えると、あとで痛い目を見ます。
決め手になるのは、その日の予定表。
取引先に会う日や来客がある日は、迷わず革靴かきれいめのスニーカーで。
社内の打ち合わせだけで終わる日なら、選択肢に入れてもOK。
IT系やクリエイティブ系のオフィスなら、わりとおおらか。
金融や不動産の営業フロアでサンダル通勤となると、かなりの勇気がいりそう(笑)
それでもサンダルで通勤したい人が守ること
せめて夏だけは、素足にサンダルで通いたい。
そんな人にお願いしたいことは、三つだけです。
ビーチを思わせる鼻緒タイプは、通勤では封印。
かかとにストラップがあって、革か落ち着いた色のものを選ぶこと。
爪とかかとの手入れを前の晩のうちに済ませておくのは、周りへの礼儀です。
混んだ電車で思いきり踏まれたときの痛さも、覚悟しておいてね。
正直言って、私の本音は別のところにあるの。
通勤はかっちりした靴で、会社に着いたら上質なオフィスサンダルへ。
足元を切り替えるその一手間に、男ぶりがくっきり出るから。
サンダルに1万円?と笑った彼が、職場で褒められた話
靴より先にサンダルを替えたら起きたこと
今の彼と付き合いはじめて、2度目の夏のことです。
ある土曜日、彼が会社のサンダルを紙袋に包んで連れて帰ってきました。
聞けば、蒸れて臭う気がするから洗いたいんだとか。
袋から出てきたのは、5年前に安売り店で買ったという、ぺらぺらのサンダル。
かかとはすり減り、つま先の縁はめくれかけている。
気づいたら、口のほうが先に動いていました。
「これ、新しいの買おう。1万円くらいの、ちゃんとしたやつ」
「サンダルに1万円?それなら革靴買うって」
笑いながら返されて、私もつられて笑ったけど、引くつもりはさらさらなかった。
だって彼、週末に革靴を磨くのが趣味なんですよ。
玄関には手入れの行き届いた革靴が並ぶのに、会社ではくたびれた5年選手。
そのちぐはぐさが、私にはどうにも見過ごせなくて。
結局、二人で選んだのは、かかとを立てても踏んでも履ける黒い革の室内履き。
ネイビーの靴下も2足、ついでにカゴへ放りこみました。
レジで彼の目が泳いだのは、見なかったことにしておきます。
2週間後の夜、仕事から戻った彼が、靴を脱ぐ前からなんだかそわそわしている。
「今日さ、後輩の子に、足元いつもきれいですねって言われた」
耳の先がほんのり赤くて、口元のゆるみを必死でこらえているのが丸わかり。
こっちまで吹き出しそうになりました。
(女の子に褒められたっていうのは、ちょっぴり複雑だけどね)
彼いわく、変化は褒め言葉だけにとどまらなかったそう。
コピー機まで歩く姿勢が、我ながらシャキッとしたらしい。
サンダルのままビルのコンビニへ降りるのも、いつの間にかやめていた。
足元を整えただけで、仕事中の自分の扱いまで丁寧になったんでしょうね。
デスクの下まで整っている人を、女性はこう想像する
女性って、男性の足元を見ながら、その先にある暮らしまで思い描いているんです。
机の下のサンダルがきれいな人は、洗面所の排水口もまめに掃除していそう。
脱いだ靴をそろえて、洗濯物もたたんでくれそう。
飛躍しすぎなのは、百も承知です(笑)
それでも、人目のない場所まで手を抜かない男性に、女性は理屈抜きでほっとする。
恋の入り口って、案外こういう小さな信用の積み重ねだったりするの。
ブランドの名前で選ぶ必要は、まったくありません。
革靴より高く、なんて煽ったのは、見栄を張らせたいからではなくて。
誰にも見られていないつもりの時間にこそ、お金と手間を注いでほしかった。
午後3時のオフィスで、足音ひとつ立てずに歩いてくる人がいたら。
たぶん私は、キーボードから手を離して顔を上げちゃう。
