キレイめ7割に、カジュアル3割。
男性向けのファッション記事やSNSで、この黄金比を見かけない日はありません。
ジャケットにシャツ、スラックスに革靴。
そこへほんの少しカジュアルを足せば、大人のキレイめカジュアルの完成…らしい。
教科書どおりで、どこにも隙がない。
でもね、その完成形で現れた男性を前に、女性がひそかにつぶやく一言があるの。
「今日って、面接だっけ…?」
7対3の黄金比は、男性同士で褒め合うための正解です。
女性にモテたいなら、その比率はいったん忘れていい。
大事なのは比率より、どこをゆるめて、どこを締めるか。
上半身はゆるく、下半身できっちり締める。
カフェのテーブルを挟んで座ったら、女性に見えているのは胸から上だけなんだから。
女友達の恋の報告を十年以上聞き続けてきた、私のかなり偏った本音です。
キレイめカジュアルの黄金比7対3は、男性目線の正解
ジャケット姿の彼の前で、私まで敬語になった日
数年前、職場の先輩の紹介で、日曜のカフェで会うことになった人がいました。
現れた彼は、紺のジャケットに白いシャツ、グレーのスラックスに黒い革靴。
シャツのボタンは、いちばん上まできっちり留まっている。
待ち合わせの駅で見たときは、文句なしのキレイめカジュアルでした。
ところが、テーブルを挟んで向かい合ったとたん、景色が変わったんです。
目に映るのは、肩の張ったジャケットと、首元まで閉じたシャツだけ。
(あれ、これ休日の面談…?)
気づけば私まで背筋をぴんと伸ばして、ずっと敬語で話していました。
笑うタイミングまで、相手の顔色をうかがってしまう。
カップのカフェラテが、いつまでたっても減らなかったのを覚えています。
帰り道、肩のあたりがかちかちに固まっていたっけ。
誠実な人だったのに、二回目の約束までは進めませんでした(泣)
テーブル越しに見えているのは、上半身だけ
デートの大半は、テーブルを挟んで座っている時間です。
そのあいだ、男性の下半身はテーブルの下に隠れて、ほとんど見えません。
一時間も二時間も、女性はあなたの胸から上だけを眺めて話しているの。
だから、会話の空気を決めるのは上半身の服。
肩のかっちりしたジャケットは、どうしても仕事の顔を連れてくる。
やわらかいニット越しなら、こちらも肩の力を抜いて笑えるのよね。
テーブルの上に置かれた手元や、袖口のあたりもよく見えています。
カップを持つ手首に、きれいに折った袖がのぞくだけで、印象はひと目盛り上がるもの。
反対に、下半身がよく見えるのは、待ち合わせや並んで歩く時間。
そこで目に入るきちんと感が、この人はちゃんとしている、という安心につながります。
上で親しみやすさを、下で信頼を。
女性が受け取りたいのは、この二つの組み合わせなんです。
上はゆるく、下はきっちり
ルールは、たったこれだけ。
トップスは、ニットやスウェット、前を開けたシャツのように、力みのないものを。
ボトムスは、折り目の入ったスラックスか、きれいなシルエットのパンツで締める。
足元は、革靴かローファー。
迷ったら、鏡の前で胸から上だけを見て、肩に力が入って見えないか確かめてみて。
比率でいえば、上はカジュアル寄り、下はキレイめ寄りの逆転配合ね。
男性雑誌の黄金比とは、ちょうどあべこべの考え方かもしれません。
それでも、女性の目にはこちらのほうが、ずっと素敵に映るの。
テーブルの上は、つい触れたくなるゆるさで
ジャケットは、ディナーの日だけで足りる
ジャケットを着るなとは言いません。
夜のレストランや、少し背筋の伸びるお店なら、むしろ着ていてほしいくらい。
ただ、昼のカフェや美術館、公園の散歩にまで羽織ってくる必要はないの。
正直言って、休日の昼にジャケットと向き合うと、上司とランチしている気分になる。
どうしても上に一枚ほしい日は、カーディガンや薄手のブルゾンで十分です。
カーディガンなら、丈が腰骨にかかるくらいの短めを選ぶと、脚が長く見えます。
前は留めずに、さらっと羽織る程度がちょうどいい。
肩に巻くだけの着こなしは、デートでは少し気取って見えるのでお休みに。
ニットは目の詰まったハイゲージを
テーブルの上の主役にいちばん向いているのが、ニット。
なかでも、編み目のこまかいハイゲージが、キレイめカジュアルの相棒です。
ゲージは編み目の密度のことで、数字が大きいほど目が密になります。
表面がなめらかなぶん、ゆるい服なのにだらしなく見えないの。
色は、キャメルやグレー、ネイビーみたいな落ち着いたものを。
女性の本音を明かすと、しっとりしたニットってさ、つい袖にさわってみたくなるの。
ちくちくしそうなニットより、肌ざわりのいいニットのほうが距離はぐっと縮まる。
デートの日は、毛玉のないものを選ぶこと。
シャツは第一ボタンを開けて、袖を二回折る
シャツで行くなら、ボタンを上まで留めるのはやめておきましょう。
襟元のボタンをひとつ外すだけで、首まわりに風が通ったような軽さが出ます。
袖は、手首から軽く二折りして、前腕を少しのぞかせて。
これ、女性がこっそり見ている場所ナンバーワンかも(笑)
素材は、張りのあるオックスフォードや、しなやかなコットンを。
色は白か淡いブルーにしておけば、顔まわりがぱっと明るくなるの。
裾をパンツの外に出すなら、お尻が半分隠れるくらいの丈まで。
スウェットとTシャツは、無地と厚みが条件
意外と、スウェットやTシャツもテーブルの上の名脇役になれます。
条件は二つだけ。
ロゴや柄の入っていない無地であること。
そして、体の線を拾わない、しっかりした厚みがあること。
下にスラックスと革靴を合わせれば、部屋着っぽさはきれいに消えてくれる。
スウェットなら、毛羽立ちの少ないつるんとした表面のものが上品。
Tシャツは、白か黒より、グレーやベージュのほうが肌なじみがよくて柔らかく見えるかな。
首元がヨレたり、裾が伸びたりしていたら、その時点でキレイめからは脱落よ。
テーブルの下は、脚に一本の線を引いて締める
センタープレスのスラックスが、全身を格上げする
下半身の主役は、迷わずスラックス。
中でも、前に縦の折り目が入ったセンタープレスのものを選んでほしいの。
その一本の線が、脚をまっすぐ長く見せてくれます。
色は、グレーか黒、ネイビーの三つから選べば外しません。
ウールっぽい落ち感のある素材なら、歩くたびに裾がきれいに揺れる。
待ち合わせ場所に歩いてくる男性の姿。
女性はそこで、上半身より先に脚の線を見ていたりするんです。
折り目の通ったスラックスは、それだけで暮らしが整った人に見えるから不思議。
アイロンが苦手なら、折り目が取れにくい加工のものを選ぶと楽ちん。
デニムで行くなら、濃紺のテーパードを一本だけ
デニムを穿きたい日もあるでしょ。
その場合は、色落ちの少ない濃紺で、裾に向かって細くなるテーパードを。
穴も、こすったような加工もない、まっさらな顔のものに限ります。
濃紺のデニムは見た目が引き締まっているので、スラックスの代わりが務まる。
丈は、裾が靴に軽くふれるくらいで止めて、たるませないこと。
ゆったりしたワイドデニムは、デートの日はお休み。
ただし、上がスウェットで下がデニムだと、全身がゆるみすぎてしまうの。
デニムの日は、トップスをニットかシャツにして、少しだけ上を引き上げて。
足元は革靴、スニーカーなら白い革
足元は、キレイめカジュアルの印象を最後に決める場所。
ローファーや、ひもで結ぶシンプルな革靴なら、どんなトップスとも仲よくできます。
スニーカーにしたい日は、白い革のものを選んで、汚れを前の晩に拭いておくこと。
布のスニーカーや、ごついボリュームのあるものは、休日の公園までにとどめておいて。
ベルトは靴と同じ色にそろえると、腰まわりから足先までがひとつながりになるの。
靴下は、パンツか靴の色に寄せておけば、座ったときにも浮きません。
細かいところだけど、ここがそろっている男性は、マジで洗練されて見えるんだよね。
テーブルを離れたら、全身の色と小物で大人に見せる
色は3色まで、そのうち1色は肌になじむ色
お店を出て並んで歩きだすと、今度は全身の色が目に入ります。
キレイめカジュアルの色は、3色までに抑えるのが基本。
そこに私なりのひと工夫を足すなら、3色のうち1色を肌になじむ色にすること。
キャメル、ベージュ、ブラウンのような、温かみのある色ね。
黒とグレーと紺だけで固めると、どこか冷たく、近寄りがたい空気が漂ってしまう。
温かい色が一つ混ざるだけで、全身の表情がふっとほどけるの。
女性が隣を歩きたくなるのは、たぶんそういうやわらかさを持った人なんです。
小物は腕時計とバッグ、それぞれ一つずつ
キレイめカジュアルの小物は、足し算より引き算で。
腕時計は、革ベルトかシンプルな金属ベルトのものをひとつ。
文字盤の大きすぎない、すっきりした顔のものなら、どんな服にもなじみます。
バッグは、手持ちでも肩掛けでも、革か厚手の帆布の小ぶりなものを。
ネックレスやブレスレットの重ねづけは、キレイめの線から一気にはみ出してしまう。
小物が少ないほど、服そのものの質のよさが際立つのよ。
秋のキレイめカジュアル、そのまま真似できる3つの組み合わせ
まずは、キャメルのニットに、チャコールのスラックスと黒のローファー。
ニットの温かみと足元の黒が、ほどよく釣り合ってくれます。
ローファーの代わりに、黒のひも靴にしても印象は崩れません。
白いシャツの袖をまくって、ベージュのスラックスに茶色のスエード靴を合わせるのもいい。
昼のカフェにも美術館にも、すっと溶けこめる軽やかさがあるの。
手首に細い革ベルトの時計を添えると、なおいい感じ。
ネイビーの厚手スウェットに、グレーのスラックスと白い革スニーカーも手堅い。
一見ラフなのに、脚の線がしっかり残っているのがミソ。
白いスニーカーは、汚れひとつない状態であることが大前提ね。
どれも、上はゆるく、下はきっちり、の約束を守っています。
ジャケットを脱いだ同期に起きたこと
ニットの袖に、彼女の指先がふれた日
同期の男性から、デートの服を相談されたのは去年の秋のこと。
彼の勝負服は、紺のジャケットに白いシャツ、グレーのスラックス。
何度デートに行っても、真面目そうだね、で終わってしまうらしいんです。
(それ、私が日曜のカフェで固まったやつだ…)
私が提案したのは、ジャケットとシャツを脱いで、キャメルのニットに替えることだけ。
スラックスと革靴は、そのままでいいと伝えました。
彼は半信半疑の顔で、ニット売り場へ向かっていきました。
選んだのは、少し明るめのキャメル。
その週末の夜、突然、彼から写真つきのメッセージが届いたんです。
映っていたのは、カフェのテーブルに並んだ二つのカップと、キャメルの袖。
彼女が、話の途中で彼のニットの袖にふれて、気持ちいいね、と笑ったんだとか。
これまでの真面目そうだね、が、今日は話しやすかった、に変わったって。
ニット一枚が、テーブルの空気をまるごと入れ替えたらしい。
スマホを持つ私の口元が、じわじわゆるんでいく。
まさか、ジャケットを脱いだだけでここまで変わるなんてね!
キレイめカジュアルは、話しかけやすさまで含めて完成する
キレイめカジュアルと聞くと、男性はつい、きちんと見せることばかり考えてしまう。
でも女性にとってのキレイめは、清潔で、ちゃんとしていて、そのうえ話しかけやすいこと。
三つ目が欠けると、どれだけ整った服でも、二人のあいだに見えない壁ができてしまうの。
結局、上をひとつゆるめる勇気が、何よりものを言うんです。
脚の線さえきっちり整えておけば、上はいくらでも遊べる。
それくらい、下半身のきちんと感には、上のゆるさを受け止める力があるの。
あの時、日曜のカフェで向かい合った彼も、上だけでもゆるめていてくれたら。
私はたぶん、敬語をやめて、もっと早く笑えていた気がします。
はぁ…テーブル越しの景色って、服ひとつでこんなに変わるのね。
