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セットアップメンズの正解|上下バラして着回すほどダサくなる

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「ねえ、上と下で色が違くない?」
姉がそうささやいたのは、去年のある食事会でのことでした。
視線の先には、姉の夫の紺のセットアップ。
よく見ると、ジャケットよりパンツのほうが、ほんの少しだけ色が浅い。
(あ、これ、パンツだけ働かせすぎたやつだ…)

セットアップは、上下バラしても着回せるのが魅力。
お店の売り場や雑誌では、たいていそう紹介されていますよね。
でも女性の目から見ると、その魅力は半分しか本当じゃないの。
バラして着るほど、セットアップはセットアップじゃなくなっていくんです。
上下そろえて着る日のための服、と割り切ったほうが、ずっと素敵に見える。
着回したいなら、二着目を買えばいい。
義兄の紺の一着が、一年かけて教えてくれたことです。

目次

セットアップは、バラして着回すための服じゃない

ジャケットだけ、パンツだけの日は、スーツの片割れに見える

セットアップは、同じ生地でつくられたジャケットとパンツの組み合わせ。
スーツより素材がやわらかく、Tシャツやスニーカーにも合わせやすいのが持ち味です。
問題は、それを上と下に分けたとき。
ジャケットだけをデニムに羽織ると、スーツの上着を借りてきた人に見えるの。
パンツだけにパーカーだと、会社のズボンで休日を過ごしている人みたい(笑)
素材や色に、スーツっぽさがわずかに残っているぶん、片割れ感がどうしても出てしまう。

もちろん、バラしても自然に見える上級者はいます。
けれど、それができるのは、素材と色の相性をきちんと読める人だけ。
最初の一着は、上下そろえて着る前提で選んだほうが、失敗しないのよ。

上下の色は、洗った回数の差でずれていく

バラして着ないほうがいい理由は、もうひとつあります。
上と下で、着る回数と洗う回数がずれてしまうこと。
パンツだけ毎週洗っていると、色あせも毛羽立ちも下だけ先に進む。
ジャケットはクローゼットの中で、買った日のままの色を保っているのに。
数か月後に上下をそろえてみると、あれ、と首をかしげるくらいの差が生まれているの。
女性は、ファンデーションの色を一段階ずつ見比べて選ぶ生きもの。
上下の色のずれには、正直言って男性が思う何倍も敏感なんです。
セットアップをセットのまま保つには、着るのも洗うのも上下いっしょが鉄則!
クリーニングも、汚れたのがパンツだけでも、上下いっしょに預けて。
それだけで、何年たっても上下の色がそろったままでいてくれるの。

春、一着目のセットアップを選ぶ日

素材は、しわに強くて家で洗えるものを

義兄が最初のセットアップを買ったのは、去年の春のこと。
売り場で、姉と私が真っ先に確かめたのは、生地の手ざわりと洗濯表示でした。
一着目に選びたいのは、しわになりにくく、家の洗濯機で洗える素材。
ポリエステルが入った生地なら、座っても電車に揺られても、しわが残りにくいんです。
上下いっしょに洗えるから、色のずれも防ぎやすいの。
夏のリネンや綿は涼しげだけど、しわまで味わいにできる人向けかな。
秋冬は、ウールが混ざったものを選ぶと、見た目にもぬくもりが出ます。

ジャケットは肩で、パンツは裾で選ぶ

サイズ選びで見るべき場所は、二か所だけ。
ジャケットは、肩の縫い目が肩先にぴたりと乗るか、ほんの少し外に出るくらい。
スーツより気楽な服だからこそ、肩まわりのゆとりが余裕に見えるの。
袖は、腕をおろしたときに手首の骨が隠れる長さを目安に。
上下が別々に売られているお店なら、上と下でサイズを変えられるのもありがたいところ。
パンツは、裾が靴の甲に軽くふれるくらいで止めるのがきれい。
裾が靴の上でくしゃっとたまると、上下そろえた意味が足元から崩れてしまう。
試着室では、ジャケットを着たまま、一度椅子に座ってみて。
背中がつっぱらず、ひざの裏に深いしわが寄らなければ合格です。
この一手間で、買ったあとの後悔がマジで減るから。

色はネイビーかチャコール、慣れたらベージュ

一着目の色は、ネイビーかチャコールグレーにしておけば外しません。
どちらも、Tシャツにもシャツにもニットにもなじむ、懐の深い色なの。
慣れてきたら、ベージュやグレージュのような、明るめの中間色に挑戦してもいい。
春の日差しの下で、ベージュのセットアップはふわっとやさしい空気をまといます。
黒は引き締まって見えるぶん、セットアップだとスーツとの区別がつきにくくなる。
お葬式帰りに見えないよう、インナーで軽さを足してあげてね。

夏、パンツだけ働かせすぎた義兄のセットアップ

パンツだけ毎週洗われた、義兄の夏

夏になると、義兄はジャケットをクローゼットにしまいこみました。
暑いから、という理由は、まあわかる。
そのかわり、パンツだけを週に三回、会社に穿いていったらしいの。
汗をかくたびに洗濯機へ。
ジャケットは一度も袖を通されないまま、ハンガーで夏を越したんです。

そして迎えた九月の終わり、家族の食事会。
久しぶりに上下そろえて現れた義兄を見て、姉の箸がぴたりと止まりました。
白熱灯の下で、パンツの紺だけがうっすら色が抜けて、表面がかすかに毛羽立っている。
肩から胸にかけては、まだ夜空みたいに深い紺なのに。
セットだよ、と胸を張る義兄の隣で、姉は小さくため息をついていた。
(いや、そのセット、もう別々の道を歩いてる…)
私はというと、笑いをこらえすぎて、おしぼりを握る手がぷるぷる震えていたっけ。
結局、そのセットアップは、上下そろって着られる日がほとんどなくなってしまったの(泣)

夏の中は、首元の詰まった無地のTシャツ

義兄の夏が教えてくれたのは、暑い季節こそ上下そろえて着る工夫がいるということ。
夏のセットアップの中は、無地のTシャツ一枚で十分です。
首元のリブが詰まった、厚みのある白かグレーを選んでおけば、肌着っぽく見えません。
ジャケットは、袖を軽くまくって七分くらいにすると、手首から風が抜けていくの。
裏地のない一枚仕立てのジャケットなら、真夏の夜でも汗だくにならずにすむ。
それでも暑い日は、ジャケットを腕にかけて歩けばいいでしょ。
お店に入って羽織り直せば、ちゃんとセットアップの顔に戻るから。

足元は、白い革のスニーカーで軽く

夏のセットアップの足元は、白い革のスニーカーがいちばん相性がいい。
スーツっぽさがすっと抜けて、休日の顔になってくれる。
靴下は、白かグレーの短めのものを、パンツの裾からほんの少しのぞかせる程度に。
サンダルを合わせると、さすがにくだけすぎてしまう。
足元の白が一点入るだけで、全身が夏の光を跳ね返すように明るく見えるんだよね。
汗ばむ季節は、スニーカーの中までにおいがこもりやすいので、二足を交互に履いてね。

秋、上下そろえて着る日にこそ映える着こなし

シャツなら、襟の小さなバンドカラーを

涼しくなってきたら、中にシャツを着る日も増えてきます。
選びたいのは、襟が帯のように立ち上がった、バンドカラーシャツ。
折り返しの襟がないぶん、ジャケットの襟とけんかせず、首元がすっきりまとまるの。
ネクタイを締める余地がないから、スーツのような堅さも出ません。
白やサックスブルーなら、顔まわりがぱっと明るくなる。
普通の襟のシャツなら、ボタンをひとつ開けておくだけで印象がやわらぐ。
シャツの裾がジャケットからはみ出すなら、パンツにしまうか短めの丈を選んで。

ニットは、ジャケットの下でもごわつかない薄手を

もう少し寒くなったら、薄手のニットの出番。
厚手のざっくりしたニットは、ジャケットの中で肩のあたりがもたついてしまう。
選ぶなら、体に沿う薄さのクルーネックか、首元が少し高いモックネック。
足元はローファーに替えて、白スニーカーの夏から季節をひとつ進めてみて。
茶色のローファーにすれば、紺やチャコールのセットアップに秋らしい温度が加わります。
意外と、紺のセットアップに茶色の靴を合わせる男性って少ないんだけどさ。
そのぶん、女性の目にはちょっと洒落た人に映るの。

女性がセットアップの男性にほっとする理由

女性から見たセットアップの男性って、不思議な安心感があるんです。
スーツ姿の男性には、どうしても仕事の顔が重なってしまう。
パーカー姿の男性には、年下の弟のような気安さが漂う。
セットアップは、そのちょうど真ん中に立っている服なの。
上下がそろっているだけで、朝に迷わず服を選べる人に見える。
それでいてスーツほど堅くないから、隣に座っても肩に力が入らない。
整っているのに、がんばりすぎていない。
そのほどよい力の抜け方が、女性にはたまらなく居心地がいいの。
だからこそ、上下の色のずれや片割れの着方は、その安心感ごと崩してしまう。
セットアップの魅力は、そろっていることそのものなのよ。

冬、二着目を手に入れた義兄が、姉と出かけた夜

二着目のセットアップで、姉の誕生日へ

秋の終わり、義兄は二着目のセットアップを買いに行きました。
あの時の姉のため息が、よほど耳に残っていたらしいの。
選んだのは、チャコールグレーのウール混。
紺の一着目は平日、チャコールの二着目は休日。
どちらも上下そろえて着て、洗濯もかならず二枚いっしょ、という約束にしたんだとか。

そして十二月、姉の誕生日の夜。
義兄が選んだのは、チャコールのセットアップに白いバンドカラーシャツ。
足元は、磨いた黒のローファーだったそう。
レストランの窓に映った二人の姿を、姉はこっそり写真に撮ったらしい。
突然、姉から私のスマホにメッセージが届いたのは、その夜の十一時すぎ。
帰り道、久しぶりに手をつなぎたくなった、って。
「上下そろってる人って、なんでこんなに頼もしく見えるんだろうね」
結婚して何年もたつ姉とは思えない文面に、思わず吹き出しちゃった(笑)
まさか、セットアップ一着で夫婦の空気まで変わるなんてね!

冬は、コートの下でも上下をそろえておく

寒い季節のセットアップは、コートの中に着ることが前提になります。
だからジャケットは、コートの袖にするりと通る薄手のものが向いているの。
コートを脱いだ瞬間、上下がそろって現れるのは、冬ならではの見せ場。
マフラーやコートで上半身が隠れているぶん、脱いだときの整った姿が際立つんです。
中には、薄手のタートルネックを一枚。
首元まで温かいから、ジャケットの下にシャツを重ねるより、ずっと身軽に過ごせる。
真冬に、ジャケットだけで外を歩くのは寒々しいので控えめに。

セットアップは、迷わない日を増やすための服

セットアップは、着回しの便利さを売り文句に並んでいることがほとんど。
でも、本当の便利さは、上下そろえて着れば朝に迷わずにすむこと。
バラして着回したくなったら、その気持ちは二着目のために取っておいて。
一着をセットのまま大事に着て、もう一着で季節や気分を替える。
季節ごとに素材を替えれば、二着でも一年じゅう回せます。
それが、女性の目に、いつ会ってもきちんとした人と映るいちばんの近道なんです。

姉の家のクローゼットには、今、紺とチャコールの二着が並んで掛かっています。
上下が一度も離ればなれにならないまま、チャコールのほうは二度目の冬を迎えようとしている。
うちの彼にも、そろそろ二着目をすすめてみようかな。

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