週末のショッピングモールで、弟のカゴを覗いたら中身が全部同じ店のものだった。
「安いし、全部ここでいいでしょ」
その一言に、私は思わずカゴを取り上げた。よくないの。同じ会社が運営していても、この二つは全然違う目的で作られているから。
値段の差だけを見て選ぶと、三か月後に後悔する。逆に、高いほうを選んでおけば安心と思い込むのも、けっこう損をする。
安いほうを選んでいい服と、絶対に避けるべき服がある
どちらが優れているか、という話をしても意味がない。作っている目的が違うから。
GUは流行を素早く形にして、短い期間で着てもらうことを前提にしている。ユニクロは形を変えずに長く売り続けて、機能で勝負している。
この違いを踏まえると、買い分けの線が見えてくる。
肌に直接触れるものは、上のほうで買う
インナー、靴下、部屋着。ここは値段の差が着心地に直結する。
ユニクロの肌着は、洗っても形が保たれる。首元が伸びにくくて、生地が薄くならない。半年着ても、買った日と大きく変わらない。
安いほうの肌着は、確かに安い。ただ、五回くらい洗うと生地がぺらぺらになって、シャツの下で丸まる。結局買い直すことになるの。
毎日着るもの、体に触れるものは、上のほうで。ここをケチると全身に響く。
一年で飽きる形は、安いほうで十分
逆に、流行の形をしたパンツや、今シーズンだけの色のニット。ここは安いほうの出番。
太いシルエットのパンツとか、丈の短いブルゾンとか。二年後に着ているか怪しいものに、高いお金を出す必要はないでしょ。
試して、似合わなかったら手放す。それができる値段であることに、価値がある。
GUの強みは失敗の許容範囲が広いこと。ここを理解して使うと、驚くほど賢い買い物になる。
ユニクロで買うと、なぜ全員同じに見えるのか
街に出ると、同じダウンを着た人と何度もすれ違う。同じフリース、同じシャツ、同じパンツ。
品質は良い。それは疑いようがない。ただ、同じものを何百万人が着ている状況で、そのまま着ると個性が消える。
定番アイテムほど、被る確率が跳ね上がる
あの薄い羽毛の上着とか、あの縦のラインが入ったジャケットとか。名前を出さなくても、たぶんわかると思う。
機能は素晴らしい。でも冬の駅前で、五分に一人は同じものを着ている。
女性側からすると、良し悪しじゃなくて、記憶に残らないの。あの人が着ていた服、と思い出そうとしても、街の風景に溶けてしまう。
サイズを一つ変えるだけで、被らなくなる
被りを避ける方法は、実はある。
みんなが選ぶサイズと、少しずらすこと。標準的な体型の人が、あえて一つ小さいものを選んで体に沿わせる。あるいは丈の短いものを選ぶ。
同じ服でも、体に合っている人と、なんとなくのサイズで着ている人では、まったく違って見える。
それと、上下を同じ店で揃えないこと。上をユニクロ、下は別の店。この混ぜ方をするだけで、全身から漂う量販店感が消える。
GUで買うと安く見える、その原因は光沢
安く見える最大の理由はデザインじゃない。生地が光を返す量。
てらてら光る素材は、写真に撮ると一目でわかる
売り場では気づかない。蛍光灯の下だと、どれも綺麗に見えるから。
外に出て、太陽の下で見ると差が出る。表面がつるっと光る素材は、反射が均一で、そこだけ人工的に浮く。
特にパンツ。膝や太ももが座ったときに張って、そこが光る。
選ぶときは、生地を光にかざしてみて。ざらっとした表情が残るものを選ぶと、値段以上に見える。
ボタンと縫い目に、価格が出る
プラスチックのボタンが薄くて、透けて見えるもの。あれは避けたほうがいい。
縫い目も同じ。ステッチが荒くて、糸の色が生地から浮いているもの。近くで見ると粗が見える。
逆に、ボタンが厚くて色が沈んでいて、縫い目が細かいものは、同じ値段でも別物に見える。
同じ棚に並んでいても、この差は必ずある。手に取って、袖口のボタンだけ触ってみて。
組み合わせると、どちらの弱点も消える
片方だけで全身を揃えると、それぞれの弱さが表に出る。混ぜると相殺される。
上は良いもの、下は安いもの
人の視線は、まず顔まわりに行く。だから上半身に手をかけたほうが効率がいい。
質の良いニットやシャツを上に置いて、下は流行の形のパンツ。この配分だと、全体が高く見える。
逆をやると、上のぺらぺらが顔の近くに来て、そこだけ目立ってしまう。
足元と小物に、別の店を混ぜる
靴と鞄とベルト。ここだけは違う店で買ってほしい。
量販店の服でも、足元がしっかりしていると全体が引き締まる。革靴でも、レザースニーカーでも。
一万円台の靴を一足持っているだけで、上下が量販店でも成立する。逆に、服にお金をかけて靴が疲れていると、全部が崩れる。
このバランス、女性はけっこう見ているよ。服のブランドはわからなくても、靴のくたびれ具合はわかるから。
弟と回った一日で、私が黙り込んだ理由
冒頭のカゴの話には続きがある。
あの日、私たちは二つの店をはしごした。目的は、彼の全身を五千円で立て直すこと。
試着室から出てきた瞬間の落差
最初に、安いほうの店で選んだ黒いパンツを穿かせた。太めのシルエットで、今っぽい形。
悪くなかった。ただ、店の外に出た瞬間、太ももの布が日光を跳ね返してぎらついた。
次に、上のほうの店で薄手のニットを着せた。首元が詰まっていて、生地に沈んだ質感があるもの。
上を替えただけで、彼の顔まわりが変わった。肌の色が持ち上がって、なんだか背筋が伸びて見えた。
あ、こういうことか
自分で提案しておいて、その差にちょっと圧倒された。
合計五千八百円の全身
最終的に選んだのは、上のほうの店のニットが二千九百円、安いほうの店のパンツが千九百円、靴下が千円。
靴は彼が元から持っていた黒いレザースニーカー。汚れていたから、その場で拭いた。
モールのガラスに映った彼を見て、私は少し黙った。
一週間前と同じ人とは思えなかったから。
後日、職場で言われたこと
その翌週、弟から連絡がきた。
同僚に、彼女できた?と聞かれたらしい。できてない。何も変わってない。パンツとニットを替えただけ。
それでも人はそう見る。服が変わると、相手の想像が動くの。
はぁ…と電話越しに彼がため息をついた。もっと早く言ってくれればよかった、って。
言ってたよ、何回も。聞かなかったのはそっちでしょ(笑)。
安いから買う、高いから安心する。どちらの理由も、選ぶ基準としては弱い。
肌に触れるものは長持ちするほうで、流行の形は試せるほうで。この線を引くだけで、同じ予算で全然違う結果になる。
次に店に入ったら、まず袖口のボタンを触ってみて。そこに、その一枚の答えが出てるから。
